【本の感想】中国にいるなら読んでおきたい、リアルな人間ドラマ『ベイジン』
『黄砂の籠城』に続いて読んだ小説は、タイトルもずばり『ベイジン』。
単行本の刊行は2008年と、やや古く
北京オリンピックを題材に使っていることもあり、現状とは異なる部分もあると思いますが
今読んでも色あせておらず、とても面白かったです。
そして、小説ではありますが、
中国のことも、原発のことも、いろいろと勉強になりました。
大連近郊に原発を建設するため、日本人技術者が赴任してきます。
2008年の北京オリンピック開会式に、その運転開始を生中継するという国家プロジェクトが計画されているのですが、
開会式直前に問題に気付く日本人。
何としてでも運転開始を生中継し、絶対に面子を潰されたくない中国政府。
その緊迫したクライマックス直前のシーンを冒頭に置き、
時間を過去に遡って、発生したことを追っていく、というストーリー展開になっています。
日本人駐在員、現地採用で働く日本人、現地の中国人スタッフ、北京及び地方の政府関係者やその家族などなど、
さまざまな立場の人間が登場します。
人間関係の書き方が、なんだかとてもリアルに感じて。
私は中国で働いているとはいえ、もちろんここまで緊迫した状況や問題に直面したことはないけれども、
「そうだよね、中国だもんね、うんうん分かる(気がする)」と、共感できる部分がかなり多かったです。
特に、現地の中国人社員との関係で悩む日本人駐在員や、
日系企業の現地採用として長年会社に貢献してきたのに、報われなさを感じ日本に失望している日本人社員の心情描写は、
なかなか的を得ているなと感じました。
当然この小説はフィクションですが、
中国に住み働いているから余計感じるリアルさは、結構鳥肌もの。
中国在住の方にもぜひ読んでもらいたいです。
ちなみに、タイトルは『ベイジン』だけれども、
主な舞台となるのは大連やその近郊。
でもあえて『ベイジン』なのは、
中国の政府そのものをも指しているでしょうし、
何か得体の知れないような、大きくて暗く深い闇のようなこの首都の名前に
いろいろな意味が込められているように思います。
日本では「北京(ペキン)」と呼ぶのに、わざとカタカナで表記したのも、
何かしらの意図を感じ、興味深いです。
この著者の小説は、他も面白そうなのでぜひ読んでみたいです。
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