元・ふわふわ北京日和

北京住み→日本に本帰国。現在は中国に関係あったりなかったりの気ままなブログ。

ファン・ビンビンが美貌を一切捨てて農村女性を演じる『わたしは潘金蓮じゃない』

2016年公開の中国映画『わたしは潘金蓮じゃない』。

主演は中国一の美人と称される女優、範氷氷(ファン・ビンビン)。彼女がいつもの華やかさを一切纏わず、田舎の貧乏なおばさんに扮するということで、公開当時すごく話題になっていました。

地下鉄のホームにポスターが貼ってあるのを見ていた私。ただ当時映画館に行ったわけではなく、いつも通り後から動画アプリで観たのですが。

 

範氷氷といったら、その華やかな美貌に何かと注目がいきがち。

ため息が出る美しさです。

baike.baidu.com

 

その彼女が、どう化けるのかと楽しみに観ました。

監督はヒットメーカーの馮小剛ですし。

 

『わたしは潘金蓮じゃない』(2016年中国)

原題『我不是潘金莲』

監督:馮小剛(フォン・シャオガン)

出演:範氷氷(ファン・ビンビン)、郭涛(グオ・タオ)、張嘉訳(ヂャン・ジァーイー)ほか

 

昨年の大阪アジアン映画祭に出品されていたそうです!だから邦題がついているのですね。

ということで、日本語でのあらすじはこちら↓を。

www.oaff.jp

 

批判も多いと耳にしていたけれど、私は面白かったです!だって馮小剛監督だもん。

 

***** 

中国のとある田舎で暮らす李雪蓮(範氷氷)が、夫に裏切られ、夫は別の女性と結婚してしまう。納得がいかない李雪蓮は、夫を訴えようとする。

夫を訴えるはずが、裁判官、市長、県長、裁判長と、訴える相手が増えていく。役人たちは李雪蓮を厄介者の変人扱いし、相手にはされない。

諦めきれない李雪蓮は北京へ行き、役人へ直訴しようと座り込みで抗議を行う。

毎年全人代に合わせて北京へ行くようになり、10年の月日が経った。

「今年もまた北京に行くの?」と聞かれ、もう行かないと答える李雪蓮。

しかし、誰もそれを信じない。憤った李雪蓮が取った道、その行く末とは…。

*****

 

中国古典に詳しくない人なら分からない、この映画のタイトル。

逆に、詳しい人ならすぐ分かると思います。

潘金蓮とは、『水滸伝』などに出てくる女性の登場人物。愛人と共謀して夫を殺した悪女です。

潘金蓮 - Wikipedia

 

ちなみに私も全然詳しくなくて、聞いたことある名前だと思っていたら、以前見た京劇の「獅子楼」という演目で潘金蓮の名が出てきたのを思い出しました!

↓この時。

minghuabj.hatenablog.com

 

すなわち潘金蓮と呼ばれることは、悪女というかもっとひどいレッテルを張られるのと同義。

それが、なぜこの映画と関係があるのでしょうか。

 

李雪蓮は夫を訴えますが、裁判官は全く李雪蓮の言い分に取り合わず、李雪蓮の訴えは認められません。

夫の所に行き話をしようとする李雪蓮ですが、別の女性と結婚し事を荒立てたくない夫は、李雪蓮を追い払おうと腹を立て、「おまえは潘金蓮だ!」と彼女に罵声を浴びせます。

もちろん悪いのは夫であり、李雪蓮は悪女ではない。しかし夫の言葉が独り歩きをして、李雪蓮は悪女だという噂が広まってしまいます。

「わたしは潘金蓮じゃない」は、自分の名誉を取り戻すための、李雪蓮の心の叫びというか、原動力になっていたのではないかな。

毎年北京に行って抗議活動を行っていたのも、「わたしは潘金蓮じゃない」という、ある意味身の潔白みたいなものを証明したいという気持ちもあったのではないかと思います。

 

美貌を捨てた範氷氷。身なりはみすぼらしく、貧しい農村女性である李雪蓮になりきっていました。この役のために方言を身に着け、体重も増やしたと、下の記事にありました。

さすが中国を代表する女優、美しいだけではなく演技も上手いです。

baike.baidu.com

 

この映画を観ると誰もが気になるであろうことが、この画面の見せ方。

農村のシーンは丸い画面、北京に出ると四角い画面に。そしてフルスクリーン。

丸い画面は、なんだか李雪蓮をのぞき見しているような気分に陥ります(笑)。

この画面効果、成功しているのかは「?」です。丸い画面は必然的に見える面積が小さくなるので、私の知り合いは、映画館で観たから一層損した気分になった、と言っていました(笑)。

私は斬新で面白いな、と思ったのですけれどね。

 

最後はちょっと切なくもあり。

ちょっと変わった人間ドラマ(?)が観たいという人にはおすすめです。

 

原作本の日本語翻訳版がありました。