憎しみの連鎖はいつまで。サウジアラビアが舞台の『キングダム 見えざる敵』
映画鑑賞記録。今回はAmazonプライムで観た『キングダム 見えざる敵』です。
アメリカ映画なのだけれど、サウジアラビアが舞台というのが面白そうだなと思って。
予想以上に引き込まれ、最後まで目が離せませんでした。
※下の方にネタバレを書いています
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『キングダム 見えざる敵』(2007年米)
監督:ピーター・バーグ
出演:ジェイミー・フォックス、ジェニファー・ガーナーほか
舞台はサウジアラビアの首都リヤド。外国人居住区で自爆テロが発生した。多数の死傷者を出し、その中にはFBI捜査官も含まれていた。FBI捜査官のフルーリー(ジェイミー・フォックス)やジャネット(ジェニファー・ガーナー)ら4人は強行に現地へ乗り込み捜査を始める。現地ではテロリストとの壮絶な戦いが待っていた。
タイトルの「キングダム」は王国、すなわちサウジアラビアのこと。映画冒頭で、サウジアラビアの経済状況などが簡単に説明されています。
イスラム教のこと、アメリカとの関係、正義とは何か、ジハードとは、信仰とは。12年前の映画なのに、今でも終わらない、人間が生み出す負の連鎖をピリピリと緊張感を持って描いていると思いました。
絶対君主制のサウジアラビアという国で、アメリカ人たちが直面すること。サウジアラビアとアメリカとの関係性。
現地に乗り込んだFBI捜査官の一人が拉致されるシーンは怖かった。
そして、重く緊迫したこの映画の中で安らぎを与えてくれるのは、フルーリーたちと、彼らのサポート役である現地警察ファリスとの心の通い合いでした。悪を憎むこと、命を奪われることに憤りを感じる気持ちは同じであって。ファリスが、警察を志したきっかけは幼い頃に『ハルク』を観たことだ、と言っていたのがなんだか切なかったです。
テロリストに立ち向かう、アメリカ万歳の映画では決してないのも良かった。
最後の最後、ラストシーンが一番の見所であり、制作者が伝えたかったことなのではないかと思いました。
この話はフィクションですが、実際に起きた事件を題材にしており、非常にリアリティがありました。
【以下ネタバレ】
この映画は決して、テロの首謀者を倒したからハッピーエンド、アメリカ強いだろ、というものではないです。
テロが発生した時、仲間の捜査官が殉職したことに悲しみを隠せないジャネットに、フルーリーが耳打ちした言葉。
テロリストが最期息絶える前に、幼い孫娘にささやいた言葉。
その言葉は同じものでした。「奴らを皆殺しにしてやる」と。
そこで映画は終わっています。
憎しみが憎しみを生む、負の連鎖。テロリストの孫はアメリカを憎むようになるでしょう。次の代もその次の代も断ち切ることのない、憎み合い。人を殺すことでしか解決できないのでしょうか。そんなことはないと信じたいのだけれど、これが世界で起きていること。重く、悲しい現実を見せつけられたような気がしました。