【ホーチミン】ベトナム戦争の残酷な記録を展示する、戦争証跡博物館
時間が経ってしまったけれど、今年2月にベトナムのホーチミンへ旅行しました。
その時に、どうしても見ておきたかった「戦争証跡博物館」を訪れました。
訪問記をずっと書こう書こうと思っていたのだけれど、戦争というものについて素人の自分が易々と書けない…なんて思ったりもして、時間が経ってしまいました。
今でも私の考えはまとまっていません。が、やはり訪れたことは残しておきたいし、この博物館とベトナム戦争について一人でも多くの人が少しでも知るきっかけになればいいな、と思って記しておきます。
私は、ベトナム戦争に興味がありました。
昨今、ベトナムは人材の宝庫として注目されています。もはや人件費が安くはなくなった中国から、人件費が安く、若くて優秀な人材が多いと言われるベトナムへ生産拠点を移そうと目論む日系企業の話は、中国で働いている時によく耳にしたものでした。
その時に思ったのが、なぜ、ベトナムは若い人が多いのだろう?と。
ちょっと調べてみるとすぐ分かりました。ベトナム戦争で多くの人が犠牲になってしまったからだ、と。ベトナムの平均年齢は31歳と、若い人が非常に多い国です。
ベトナム戦争は1975年に終結しました。わずか44年前のことで、成長・発展著しい勢いのあるベトナムには、まだまだ記憶に新しい戦争の爪痕が残っていること。
そしてなぜ、あの大国アメリカが大苦戦を強いられたのか。
そのようなことから、ベトナム戦争に興味を抱きました。
私は、宿泊先のロイヤルホテルサイゴンから徒歩で行きました。20~30分くらい歩いた気が。途中でおしゃれなレストランPropaganda Vietnamese Bistroを見つけ、帰りに寄って帰りました。
↑こちらが戦争証跡博物館のエントランスです。
↑外の受付でチケット代金を払いました。40,000ドン。シールは、入場料を払ったしるしとして服に貼っておきます。
↑屋外では、戦車や戦闘機が何台も展示されています。
↑こんなに間近で戦車を見ることができます。
↑見づらいですが、右下の写真は、枯葉剤によって全滅してしまったマングローブの森に、まだ幼い男の子がたたずんでいるショッキングな写真です。正面から撮った写真を下に載せます。
博物館は3フロアあります。
1階には、世界各国からの反戦メッセージなどが展示されていました。
↑日本での反戦運動の資料もありました。
↑こちらは中南米諸国からの資料。
↑1階の吹き抜け部分。
2、3階は、実際に使われた武器や、悲惨で目をそむけたくなるような写真が多く展示されていました。
拷問される人や虐殺された遺体。銃を突きつけられるベトナム人女性。一般市民に攻撃を加える米兵。枯葉剤の影響によって障がいをもって生まれたり、奇形児となってしまった人たちの写真など。
こんなにも人は残虐になれるのかと…戦争の狂気と凄惨さに言葉が出ません。
私が特に驚いたのは、米軍が散布した枯葉剤の被害について。枯葉剤は多くの人に健康被害をもたらし、それが子ども、孫にまで影響を及ぼす場合もあります。体がつながった双子のベトちゃんドクちゃんの写真もありました。
枯葉剤が蝕んだのは、ベトナム人だけではありませんでした。米軍兵士の体にも枯葉剤の影響は降りかかり、兵士の子どもが枯葉剤によってアメリカで障がいを持って生まれた、その子どもの写真もありました。
さらに、この戦争には多くの国から報道陣やカメラマンが現地入りし、死と隣り合わせの中まさに命がけで現状を伝えようと奮闘していました。その中では何人ものカメラマンやジャーナリストが命を落としました。
彼らの功績や作品も展示されており、日本人カメラマンについても紹介されていて、目が釘付けになりました。
↑こちらは日本人カメラマン沢田教一さんが撮影した、非常に有名な写真。沢田さんはこの写真で、ピュリッツァー賞を受賞しました。
↑ベトナムとインドシナで犠牲になった、あるいは行方不明になったカメラマンの名前。一ノ瀬泰三さんの名前もあります。
↑日本人ジャーナリストたちが伝えたベトナム戦争。日本語も併記されています。
↑これは、上に載せた、博物館の外壁に飾られている写真を正面から撮ったものです。
↑犠牲者の多さに、改めて言葉を失います。
展示はどれも生々しくて、悲惨なものでした。屋外には、拘置所やギロチンなども展示されています。怖がりの子どもはさらにショックが大きいのでは…と感じました。
しかし、私の印象だと、相手国や兵士を責めるようなものではなくて、ひたすら淡々と、戦争がもたらした被害を写真を中心に展示しているような空間でした。写真や武器など、視覚にストレートに映ることで、そのインパクトは非常に大きく、ショッキングでもある。と同時に、こんな悲劇を二度と起こしてはいけない…と、強く感じます。
参観者の大半は、欧米人観光客でした。多くの人が、真剣に展示を見ているように見えました。私が訪れた時は、日本人観光客は見かけませんでした。
気持ちが重くなりながらも、ここに来てよかった、と思いながら博物館を後にしました。
↑博物館の敷地内、戦車の横にテト(旧正月)を祝うこんなに可愛らしい飾りがあったりして。
↑共産主義っぽいテイストの看板です。街全体で、テトを祝う装飾を見かけました。
ベトナム進出を目論んでいたり、既に進出してビジネスを行っている海外企業はたくさんあると思います。中国に対してもそうです。
偏ったニュースばかりを鵜呑みにするのはもちろん良くないけれど、偏見なしに、その土地の歴史を知ろうとした上で現地と付き合うことができている人って、どれだけいるのだろうか。
日本人に限らず、アジア諸国で横柄な態度を取っている外国人を見るにつけ、そう思います。
遠くない過去に悲惨な戦場となり、今急速な発展を遂げるベトナム、ホーチミン。笑顔と活気にあふれにぎやかなこの街が、どんな苦しみの上に成り立っているのか。
それでも、過去を引きずってばかりいるというよりは、私が過去に2度旅行で訪れたこの国のエネルギッシュな様子からは、未来への大きな希望が感じられます。
戦争証跡博物館。ホーチミンを訪れたら、ぜひ多くの人に足を運んでもらいたい、観る価値のある場所でした。
戦争証跡博物館 War Remnants Museum Bao Tang Chung Tich Chien Tranh
住所:ホーチミン市3区ボーヴァンタン通り28 28 Vo Van Tan St. Dist.3, Ho Chi Minh City
公式サイト(英語)
www.baotangchungtichchientranh.vn