元・ふわふわ北京日和

北京住み→日本に本帰国。現在は中国に関係あったりなかったりの気ままなブログ。

2つの家庭を持つ夫。中国映画『二重生活』が描く愛憎サスペンス

中国映画鑑賞。『二人の人魚』と同じ、ロウ・イエ監督の『二重生活』を観ました。Amazonプライム対象になっています。

本妻と愛人、2つの家庭を持つ浮気男の二重生活。ギリギリで保たれていたバランスが、ガラガラと音を立てて崩れていく愛憎サスペンスです。 なかなか面白かった。

 

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『二重生活』(2012年中・仏)

原題《浮城谜事》(『浮城謎事』)

監督:婁燁(ロウ・イエ

出演:郝蕾(ハオ・レイ)、秦昊(チン・ハオ)、斉渓(チー・シー)ほか

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舞台は武漢。ある大雨の日、見るからに道楽息子の若者が、高級車に女性を乗せてわき見運転をしていたところ、突然目の前にふらふらと現れた女子大生シャオミンをひき殺してしまった。

ある家族。陸潔(ルー・ジエ、郝蕾)は夫の喬永照(チャオ・ヨンジャオ、秦昊)と、娘と不自由なく暮らしていた。娘が通う幼稚園で、息子を同じ幼稚園に通わせる桑琪(サン・チー、斉渓)とママ友になる。

桑琪は陸潔とカフェで会い、「夫が浮気をしているみたいなの」と陸潔に相談する。カフェから窓の外を見やると、向かいのホテルから永照と若い女性が出てくるのを目撃する。

夫の浮気を突き止めようと、永照を尾行した陸潔。永照が向かった先はなんと、桑琪の家だった。永照は外でもう一つの家庭を持ち、桑琪と息子と暮らしていたのだった…。

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愛憎渦巻くドロドロのラブストーリーというだけではなく、サスペンスミステリーの要素がしっかりと組み込まれているので、飽きずに夢中になってしまいました。

全部観たわけではないけれど、ロウ・イエ監督の作品にはとても引き込まれます。暗くてざらついた画面と、バイオレンスな描写、何とも言えないあやふやな幕引き。観る者を選びそうですが、私は好きです。

最後はなんだか、腑に落ちないモヤモヤも感じましたが。

 

この映画、何も知らずに観れば、浮気性の夫永照が最悪だなぁ、腹立つー地獄に落ちろー!愛人はしたたかだなぁ、うーんモヤモヤ…。というくらいの感想で終わっていたかもしれません。

ただ、公式サイトのイントロダクションを読み、ああ、そうなのか、と気付きました。

「中国では二重生活をしている人が多くいる」と監督が語るように、現代中国社会のダブルスタンダードや、一人っ子政策の弊害という問題をも浮き彫りにしつつも、

この映画について - 映画『二重生活』公式サイト

ネタバレになるので、詳しくは下の方で。

 

郝蕾は『最愛の子』にも出ていました。表情で魅せる演技が上手いなぁと思います。

刑事役の祖峰(ズー・フォン)、観たことあるなと思ったら思い出しました。人気ドラマ『歓楽頌』で劉涛演じるアンディの相手役の人でしたね。亡くなった女子大生の元彼役で、朱亜文(ジュー・ヤーウェン)も出ていました。

 

これまでに観たロウ・イエ監督作品↓ 

minghuabj.hatenablog.com

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【ネタバレ含むメモ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この映画が、中国の一人っ子政策とどう関連しているのか。

永照は、妻の陸潔との間に女の子をもうけ、幸せに暮らしていました。愛人桑琪との間に子どもができても、妻と娘を大切にするならば、桑琪との関係は二重生活ではなくて他にやりようがあったはずです。

なのになぜ、二重生活を続けていたのか。

私なりのその一つの解釈が、桑琪との間に産まれたのが男の子であったこと。一人っ子政策下では、跡取りなどのため男の子が優先的に望まれ、男尊女卑などさまざまな問題が起こりました。永照は愛人との間に男の子が産まれたことを喜んだのでしょう。映画の中のセリフで、桑琪は愛人にも関わらず永照の母も公認だったことが分かりますが、そんなびっくりなことも、永照の母が男の孫ができたことを喜んだからであろうと容易に想像できます。

私の実際の知り合いにはいませんが、監督が言うように、実はこのような“二重生活”を送っていた男性は、一人っ子政策下である程度いたそうです。

私はやっぱり本妻の気持ちに寄り添いたくなるので、浮気夫も浮気相手も到底許す気持ちにはなれない。しかし、ただ欲望が引き起こしたというだけではない、一人っ子政策という社会問題も背景にあるということを知ると、この映画の見方も少しは変わってきそうです。