元・ふわふわ北京日和

北京住み→日本に本帰国。現在は中国に関係あったりなかったりの気ままなブログ。

田舎を抜け出し背伸びしたかったあの頃。映画『レディ・バード』

映画鑑賞記録。昨年のアメリカ映画『レディ・バード』です。田舎の女子高生が都会に憧れ、高校生活最後の1年を悩みながら過ごす“青春”ムービー。

というと何の変哲もなさそうに見えますが、「アメリカの高校生?『ゴシップ・ガール』や『The OC』みたいなセレブで華やかな世界でしょ?」みたいなのとは全く違う、とっても地味な世界です。でもそれが、刺さる人には刺さるんだな。意外と良かったです。

 

※画像をクリックするとAmazonページに飛びます

レディ・バード(2018米)

原題:Lady Bird

監督:グレタ・ガーウィグ

出演:シアーシャ・ローナンローリー・メトカーフほか

Amazon.co.jp: レディ・バード (字幕版)を観る | Prime Video

 

*****

カリフォルニア州サクラメントカトリック系の高校に通う17歳のクリスティン(シアーシャ・ローナン)。田舎で閉塞感のあるサクラメントを出て、ニューヨークの大学への進学を夢見ている。自分のことを“レディ・バード”と名乗り、恋愛や友達、家族との関係に悩みながら高校最後の1年間を過ごす。

*****

 

全体を通して、派手な場面はなく静かに時間は流れます。観る人によっては退屈、つまらないという感想を抱くかも。

私は、少なくとも主人公に共感する部分があったし、ラストの終わり方もすがすがしくて、こういう映画も良いな、と好感を持ちました。

 

私も地方の田舎出身なので、10代の子が都会に憧れる気持ち、すごくよく分かります。テレビや雑誌で見る、東京などの都会に憧れて、この田舎を出たい、と思っていたし。高校を卒業後地元を出て、大学は神戸に、そして就職で東京に引っ越しました。

あの頃はとにかく出て行きたかった地元の街。でも、社会人になったくらいからかな、地元や家族に対する考え方が徐々に変わって、やっぱり地元が好きだって思えるようになりました。都会のキラキラだけじゃなくて、嫌な部分も見えてきたこともあるしれないけれど(笑)。

そして、大学時代に実家から通う友人に「ここではない、帰れる場所があるって羨ましい」と言われて驚いたことを思い出しました。あの頃は神戸暮らしが楽しすぎて帰省するのはあまり気が進まなかったけれど、今では、日本の、そして地球のどこにいようと、帰れる場所があり、いつでも味方でいてくれる家族や、気心の知れた友達がいてくれるのって、改めて良いことだなって思います。

さらに、都会生まれ都会育ちの都会っ子が味わってこなかった、田舎で子ども時代を過ごした良さも、大人になって分かった気がします。あんなに都会に憧れていたのに、東京暮らしを経験した後は、子どもを育てるならここじゃなくて田舎の方が良いなぁ、なんて思ったりもします。

レディ・バードもきっと、地元や家族への愛情を大人になっていつか感じる時が来るのだと、思います。

 

レディ・バードを見ていると、体験したことは違えど、今となってはちょっとこっぱずかしい(というか痛々しい(笑))“あの頃”を思い出して自分に重ねてしまいます。そういう人、特に女性は多いのではないでしょうか。

家族(特に母親)との衝突、恋愛への憧れも。自分の存在意義は何だろう、将来何がしたいのだろう、答えを探すけれど見つからずモヤモヤ。

後から思い返せば些細で大したことない悩みを抱えて揺れ動いていたあの頃の気持ちを、丁寧に慈しみながら表現しているように見え、好感を抱きました。

 

もう随分過去となってしまった高校生の頃を思い出して、ちょっと郷愁に浸ってしまう映画でした。