Amazonプライム配信の力作ポリティカル・サスペンス映画『ザ・レポート』
映画鑑賞記録。Amazonプライムで配信されている『ザ・レポート』です。日本では劇場未公開。Amazon Studiosが提供する、Amazon Original作品です。
こんな見ごたえのある傑作が未公開だなんて! すごく良かった。私好みです。
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『ザ・レポート』(2019年米)
原題:The Report
監督:スコット・Z・バーンズ
Amazon.co.jp: ザ・レポート (字幕版)を観る | Prime Video
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9.11同時多発テロ後、焦りを隠せないCIAはアラブ系のテロリスト容疑者を次々と拘束していた。FBIの対テロ部門で働くダニエル(ダン)・J・ジョーンズ(アダム・ドライバー)は、上院議員のダイアン・ファインスタイン(アネット・ベニング)に、CIAの尋問プログラムについて調査を行うことを命じられる。調査を進めるにつれ、CIAが「強化尋問プログラム」として、容疑者に非人道的な拷問を繰り返してきたことが判明。この事実を公表しようとするも、CIAと大統領府の妨害を受ける。
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実話を基にした話で、ダニエル・J・ジョーンズは実在の人物。
この原題、元々は「The Torture Report」だったのが、上のビジュアルのようにTortureが黒塗りされ、「The Report」となっています。tortureは「拷問」。
この黒塗りが、CIAが事実を隠蔽していたということを実に上手く皮肉で表しているなと思います。
ところどころに拷問シーンが出てきますので、苦手な人は注意。
ネタバレになるのでこれ以上は下に書きますが、膨大な数の資料を数年にわたってひたすらに調べ、アメリカの闇を暴こうと没頭する主人公の信念とその姿には圧倒されます。アダム・ドライバーの熱演にひきつけられました。
対して、これを観ながらどうしても頭に浮かんできてしまうのが、資料や公文書を隠し通し、「シュレッダーにかけた」なんて答弁が飛び出してしまう我が国ニッポンのお偉い方のお粗末さたるや。憂う…。
<以下ネタバレ含む>
9.11後、アラブ系の人々に対する差別が助長され、特にアメリカにおいては非常に焦りもあったのだと思います。
テロリスト容疑者には何をしてもいい、と思われていたのかもしれません。
CIAは「強化尋問プログラム」とそれらしく称しても、実際行われていたのは明らかな拷問でした。そのプログラムをレクチャーするのは、尋問経験のないお粗末なインテリ。
しかし、拷問は国際的にも禁止されており、いかなる犯罪者に対してもその人権は守られなければならない。
CIAは「強化尋問プログラム」を多数の容疑者に対して行いますが、成果は得られません。成果がないのに見直したり中止したりはせず、それどころかやり方は過激になり、繰り返していた。
その事実を暴こうとするダンを、CIAは妨害します。
調査を続けるうちにメンバーが抜け、CIAの妨害にあい、それでも孤軍奮闘でひたすらに正義を追い求めたダン。
そして、ついにファインスタイン上院議員はついにダンのレポートを公表します。彼女の言葉が深く突き刺さります。
「報告書を完成させるだけではなく、公表できる国でありたい」
日本の政治家に聞かせてやりたいわ、全く。
一度は隠蔽された過ちを認め、公にすることができる。実際はアメリカにももっともっと汚いことや闇はあるでしょう。それでも、このように汚点を認め、堂々と国民に公表することができる。そうあるべきだと、心から思います。
骨太の傑作ポリティカル・サスペンスでした。特に、本当に低レベルな“シュレッダー”答弁が行われたばかりの我が国において、観るべき映画だと思いました。
祖国の政治を誇りに思える人間でありたいよ。