元・ふわふわ北京日和

北京住み→日本に本帰国。現在は中国に関係あったりなかったりの気ままなブログ。

女刺客とその”影”の、切ない物語。中国ドラマ『晩媚と影~紅きロマンス~』

中国ドラマ『晩媚と影~紅きロマンス~』を、Amazonプライムで観終えました。

若手注目株の李一桐(リー・イートン)と、屈楚蕭(チュー・チューシャオ)が主演の、唐崩壊後の五代十国時代を舞台にしつつもファンタジー色の強い、古装劇です。

ファンタジーというか、イリュージョンかい!とツッコミたくなるような非現実的な演出、流血や拷問など残酷な描写も多いし、どちらかというと苦手な類のドラマ…だと、思ったのに!

なんだか不思議な魅力があって、ハマってしまうドラマでした。なかなか面白かった。

色彩にこだわった映像美にも引き付けられます。

 

『晩媚と影~紅きロマンス~』(2018年中国)

原題《媚者无疆》

出演:李一桐(リー・イートン)、屈楚蕭(チュー・チューシャオ)、汪鐸(ワン・ドゥオ)、徐潔児(ジル・シュー)ほか

baike.baidu.com

 

Amazonプライムの視聴はこちら↓。全36話です。

Amazon.co.jp: 晩媚と影 -紅きロマンス-(字幕版)を観る | Prime Video

 

予告編↓

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唐滅亡後の五代十国時代。戦乱の世、貧しい家の少女・蘇七雪(そしちせつ/スー・チーシュエ、李一桐)は、日銭を稼ぎながら父親と幼い弟と暮らしていた。家族を大切にしていた七雪だったが、父親は七雪を騙し、妓楼に売ってしまった。

妓楼で絶望していた七雪は、偶然現れた謎の美女・流光(りゅうこう/リウグァン、郭雪芙)に、ここから出してほしいと頼む。流光に言われて七雪が向かったのは、則天武后の隠密機関として設立された、女たちの暗殺組織・姽嫿城(きかくじょう)。流光は姽嫿城の刺客だった。

七雪は姽嫿城で晩媚(ばんび/ワンメイ)という名を与えられ、刺客となった。刺客の護衛役、”影”として晩媚に仕える長安(ちょうあん/チャンアン、屈楚蕭)と出会う。晩媚と長安は惹かれ合うが、姽嫿城で刺客と影の恋は許されないことだった…。

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貧しい少女晩媚が、女たちの暗殺組織・ 姽嫿城で刺客となり、過酷な試練や葛藤を乗り越えながら成長していく物語です。

そして、”影”(中国語では”影子”(インズ))として、晩媚に仕える寡黙な男、長安。彼は実はただの影ではなく、本当の身分を隠し、復讐のために姽嫿城入りした人物でした。

許されない恋に落ちる2人。それぞれの気持ちが切なくて、思った以上に感情移入してしまいます。

 

晩媚は純粋な少女でしたが、刺客となった以上、生きのびるためにはターゲットを暗殺しなければなりません。しかし、割り切れない晩媚は、ターゲットを仕留めようとしても、その人物に同情してしまったり、優しい気持ちが芽生えてしまったりして、なかなか手を下せないことも。自分が生きのびるために人を殺さなければならないことに矛盾を感じ、葛藤します。晩媚を支えたのは、影である長安でした。晩媚は長安に恋をします。

長安は口数が少なくいつもポーカーフェイス、感情を表に出さないタイプ。そんな長安もまた、姽嫿城の他の女性たちとは違う、天真爛漫で心優しい晩媚に惹かれます。

晩媚は姽嫿城で、人間の残酷さや醜さなどの負の側面に打ちのめされ、体も心もボロボロになりながらも、生きることに執着していきます。

 

晩媚に惹かれる男性がもう一人。晋王・李存勗(りそんきょく/リー・ツンユン、蘇小玎)の義兄・李嗣源(りしげん/リー・スーユエン、汪鐸)です。姽嫿城には女城主の姹蘿(たら/チャールオ、徐潔児)が君臨していますが、影の支配者は、表には出ず別宅で療養しながら静かに過ごす、盲目の美男子・李嗣源、通称”若様”でした(中国語では”公子”(ゴンズ)と言っています)。李嗣源も晩媚と出会い、惹かれます。

視聴者はきっと、長安派と若様派に分かれて、どちらかに肩入れして観てしまいますよね( ´艸`)私は長安派です(笑)。

 

若様は、中性的でミステリアスな魅力をまとった美男子。晩媚を手に入れたい気持ちから、手段を選ばず、傲慢で非道な面も時にのぞかせます。

一方の長安は、パッと見イケメンタイプでは決してないのですが(すみません)、独特の魅力があって、人を引き付けるんですよね。長安のキャラクターがハマっているのもあるのでしょうけれど、見れば見るほど魅力的に感じる人でした。

このドラマ、ラブストーリーなのに、キスシーンすらないんですよね。それなのにこんなに切ないなんて。寡黙で自分の気持ちを抑えるタイプの長安が、重要な場面でだけ、晩媚を強く抱きしめるのですが、無言の演技が素晴らしくて、強く印象に残りました。

キャストも初めて見る人ばかりでありながら、演技は上手いし、ハマっていました。晩媚役の李一桐と、長安役の屈楚蕭は、音声が吹替ではなく本人の声でないのも好印象で、屈楚蕭の低い声も素敵でした。欲を言えば他のキャストも、吹き替えないでほしかったけれど。

 

女刺客たちの城、姽嫿城。姹蘿、流光、晩香(ばんこう/ワンシャン、卓煜茜)、月影(げつえい/ユエイン、馬歌)、姹蘿の影の刑風(けいほう/シンフォン、李子峰)など、それぞれが背負った過去や苦悩も描かれ、薄っぺらい描写になっていなかったのも良かったです。

特に、城主の姹蘿のキャラクターは強烈でした。残酷な悪役なのだけれど、刑風との関係は切なかったし、憎み切れない人間味がありました。

演じる徐潔児さんのハマり具合もすごくて。妖艶で美しい美魔女、表情の作り方など、上手いなぁと思いながら観ていました。

 

また、李存勗と李嗣源は、実在する歴史上の人物です。もちろんこのドラマではかなり脚色されており、設定のヒントを得た程度かと思われますが。

五代十国時代に、後唐という国を建てた初代皇帝が李存勗、その後を継いだ2代目皇帝が李嗣源。後唐の建国もチラッとだけ出てきます。

後唐 - Wikipedia

 

最終話だったかな、「媚(うつく)しきもの 疆(かぎ)りなし」

という日本語字幕で出てきたフレーズがあったのですが、この中国語音声は「媚者无疆」。

このドラマの原題です。とても重要なフレーズなのですよね。

日本語字幕だけだと、それが分からなくて、残念だなぁと思ったり。日本語字幕に頼りきらず、中国語音声を聞き取れると、そういうところまで気付けてなんだか得した気分になります( ´艸`)

 

音楽もなかなか良くて、特に挿入歌の、曹格さんという歌手が歌う『一』という曲は素敵でした。

長安が晩媚のために花火を上げるシーンでこの曲が流れた時は、感動してしまいました~。

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色使いにこだわった映像も綺麗でした。赤、青、ピンク、紫、緑…。作り手側にはきっと、それぞれの登場人物のテーマカラーが設定されていて、それが観るものにもしっかり伝わってきました。妖しく退廃的な世界観も、よく表現されていたのではないでしょうか。

ただ、闘うシーンはイリュージョン的な技も多くて、刺客だからといって剣一本で勝負するわけではないのね…魔法使いかっ!とツッコミたくなる描写もてんこ盛りでしたが(笑)。まあ、ファンタジーだしね。CGも惜しみなく駆使されていたし、ワイヤーアクションも健在でした。

あと、冒頭にも書きましたが、流血や拷問シーンも多く、残酷で気持ち悪い描写も頻繁に出てきます。グロいのが嫌いな私は、時々目をそむけていました😅それでも面白くて、最後まで観ちゃいましたけどね。

そして、最後の終わり方は気になりますよ…。長安ー!!

 

ちょっと変わった、不思議と引き付けられるドラマでした。

 

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