【本の感想】一昔前の台湾を生き生きと描いた、直木賞受賞作『流』
一時帰国中に何気なく手に取ってみた小説『流』。
直木賞受賞作という肩書きは読み手を裏切らず、とても面白かったです。
舞台は1970年代の、まだまだ混沌としていた台湾。
主人公である17歳の少年が、祖父が殺された真相を追いかけるというのがストーリーの軸ですが、
主人公が少年から大人になりゆくにつれて体験するさまざまなできごと、家族関係、友人関係、恋愛模様などがエネルギッシュに描かれていて、青春小説のようでもあります。
主人公の祖父は大陸(山東省)の出身で、台湾に逃れて来ました。
祖父が殺された真相を追うごとに、主人公も成長していく様が伝わってきます。
著者自身が、台湾生まれ日本育ちの方だそうで、だからこそ書けるのであろうリアルさと説得力を感じました。
時代背景の描写も勉強になります。当時、中国大陸と台湾は自由に行き来ができなかったんですよね。
普通に暮らしているこの大陸と、親日として日本人人気の高い台湾。
外国人からはなかなか見えにくいけれど、さまざまな事情と人の想いが交錯して、それらは今も続いていること、忘れてはいけないと思いました。
話がそれますが、私が4年ほど前上海に住んでいた時、
上海でワインショップを営む台湾人のおじさんと知り合いました。
全然関係ないけれど、ふと思い出したおじさんの言葉。
「ここでは、自分のような台湾人はよそ者扱いされる。お店を開いても、いろいろ嫌がらせをされるんだ」と悲しそうに言っていました。
(もちろん、上海人皆がそうであるというわけではありません)
外からはあまり分からないけれど、複雑な感情問題があるんでしょうか。
そういう場面に出くわした時、外国人としてどう振る舞うべきなのか。
私もまだまだ、中国について知るべきこと、考えるべきことがあると思います。
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