元・ふわふわ北京日和

北京住み→日本に本帰国。現在は中国に関係あったりなかったりの気ままなブログ。

一人二役の周迅(ジョウ・シュン)の魅力に吸い込まれる『ふたりの人魚』

婁燁(ロウ・イエ)監督の初期の映画『ふたりの人魚』を観ました。観たいなぁと思っていたら偶然Amazonプライム対象になっているのを発見。日本語字幕です。

切ないラブストーリーのようで、小説のようなロマンチックなファンタジーでもあるような。不思議な雰囲気をまとった非常に独創的な映画でした。私はとても好き。

 

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『ふたりの人魚』(2000年中国)

原題《苏州河》(『蘇州河』)

監督:婁燁(ロウ・イエ

出演:周迅(ジョウ・シュン)ほか

Amazon.co.jp: ふたりの人魚を観る | Prime Video

 

長いセリフはあまりなく、中国語の聴き取りレベルはそれほど高くないと感じました。

そしてこの映画、中国内地(大陸)では上映禁止となっています。百度百科には「審査に提出せずに海外の映画祭に参加したため、中国内地で上映禁止を命じられた」とあります。

baike.baidu.com

 

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まだ急速な発展を遂げる前の上海。街を流れる蘇州河は汚く雑然としており、両岸で庶民が日々の生活を営んでいる。

主人公は語り手の「僕」。「僕」の目線で物語はスタートし、カメラにその姿は映らない。「僕」はフリーの映像カメラマン。

「僕」の元にある日舞い込んできた仕事は、とあるバーの大きな水槽で繰り広げられる人魚ショーの撮影だった。

人魚を演じるのは美しくミステリアスな女性、美美(メイメイ、周迅)。「僕」と美美は親しくなり、付き合い始める。 

物語にはもう一組のカップルが登場する。バイクで運び屋の仕事をしている馬達(マー・ダー、賈宏声)がある日運ぶのを頼まれたのは、物ではなく少女牡丹(ムーダン、周迅)だった。牡丹の父は愛人を家に呼んで浮気をするため、その間牡丹をおばの家に運ぶよう頼まれた。馬達と牡丹は惹かれ合うが、ある出来事をきっかけに牡丹は失踪してしまう。

牡丹を探す馬達は偶然、牡丹とうり二つの美美に出会う。美美は牡丹だと信じる馬達は、美美に付きまとうようになる。

「僕」と美美、そして馬達と牡丹の恋の行方は。そして美美は牡丹なのだろうか。

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約20年前に撮られたこの映画。美美と牡丹を演じる、若き日の周迅がとても魅力的でコケティッシュで、女の私でもその魅力に吸い込まれそうでした。

あどけない少女の牡丹と、人魚に扮する妖艶な美美、うまく二役を演じていたように思います。

人間の美美が人魚に“変身”するシーン。カメラが馬達の視点とかぶり、無言で“変身”を覗き見するシーンは、非常に強い印象を残したのではないでしょうか。

周迅は言わずと知れた中国を代表する女優の一人で、最近ではドラマ『如懿伝』などで海外にもファンが多いです。

 

まだ急速な発展を遂げる前の上海。お世辞にも綺麗とは言えない蘇州河、雑然として全く洗練されておらず混沌とした街の様子。浦東の高層ビル群は、東方明珠くらいしか目立ったものが映っていません。

私が初めて上海を訪れたのは映画よりもずっと後になるので、この時期の上海のことは知りません。しかし、なんだか懐かしくノスタルジックな気分に囚われてしまって。どれだけ発展しても、ああ、中国ってこんなんだったなぁと、あのなんとも言えない空気を懐かしく感じたのでした。

 

以前住んでいた上海が懐かしく、ある意味「魔都」の名にふさわしいような、ミステリアスで不思議な人魚の物語。強烈な印象を残したことは間違いありません。