【本の感想】『なぜぼくが新国立競技場をつくるのか』隈研吾著
お恥ずかしながら、私が隈研吾さんのお名前を知ったのは中国に来てからです。
2012年に上海に来た時、たまたま私の周りの中国人が隈さんのお名前を知っていて。
その時はすでに、中国でも知名度の高い、日本を代表する建築家でした。
北京には、隈さんの作品がいくつもあり、どれも北京で大きな存在感を放っています。
コミューン・バイ・ザ・グレート・ウォールの「竹の家」、ザ・オポジットハウス、三里屯太古里、三里屯SOHO。
いずれも、今の北京になくてはならない建築たち。
そんな、北京とも縁の深い隈さんは、2020年の東京オリンピックに向けた新国立競技場を設計することになり、
マスコミをにぎわせたのは記憶に新しいです。
一時帰国中に偶然この本を見つけ、読んでみました。
丹下健三氏設計の国立代々木第一・第二体育館を、10歳の頃に訪れた隈さん。
そのあまりのカッコよさに衝撃を受けたことが、建築家の道へ進むきっかけとなったそうです。
白紙になった新国立競技場の最初の案を作った、故ザハ・ハディッドについても触れています。
(ザハも、銀河SOHOなど北京と縁のある人。)
ザハには、世界中のコンペで負け続けたそう。
斬新でとがった、派手なザハのデザインは、中国をはじめ世界中のコンペで”受ける”。
そんなザハがいたから、自分の道(隈さんの言葉でいう「負ける建築」)をつきつめることの大切さが分かったと言います。
その他、印象的だった点を箇条書き。
- 隈さんの建築の主役は木。新国立競技場にも木を用いる。
木を使うことへの理由とこだわり、木造建築が与える影響。
震災で目の当たりにした、コンクリートの脆さ。
- 日本では、「どんな仕事でもやります」と自分を売り込む。
しかし、それは海外で仕事をするならマイナスになる。
世界は受け身で戦え。自分の技を磨き、自分の仕事への信頼を周囲から獲得すること。
- 日本は”辺境”。しかも居心地が良い辺境。そのぬるま湯に浸かっているうちに、世界のトレンドや時代の流れに取り残される。
世界に出ろ、と自分の事務所の若いスタッフには言う。世界に出ると、自分の置かれたポジションが分かる。
竹の家の誕生裏話や、北京にあるCCTV(中国中央電視台。レム・コールハースが設計)への批判などもあり、北京に住む者としては余計に面白かったです。
建築に詳しくなくても、読みやすい本でした。
隈さんの他の著書も読んでみたいです。
そして、これを読んでから、新国立競技場の完成がますます楽しみになりました。
その時は、日本か北京か、どこにいるのやら…?
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