元・ふわふわ北京日和

北京住み→日本に本帰国。現在は中国に関係あったりなかったりの気ままなブログ。

中国で実際に起きた児童誘拐事件を基にした映画『最愛の子』(原題『親愛的』)

ちょっと前の作品ですが、観たかった映画『親愛的』が動画アプリで配信されていたので鑑賞。日本でも『最愛の子』の邦題で公開されました。

 

※画像をクリックするとAmazonページに飛びます

『最愛の子』(2014年中国)

原題《亲爱的》(親愛的)

監督:陳可辛(ピーター・チャン

出演:趙薇(ヴィッキー・チャオ)、黄渤(ホアン・ボー)、郝蕾(ハオ・レイ)、佟大為(トン・ダーウェイ)ほか

baike.baidu.com

私は中国の動画アプリで中国語字幕のまま鑑賞しました。日本でも日本語字幕で公開され、Amazonなどで視聴できます。

日本公式サイト

bitters.co.jp

この公式サイトで予告編が観られます。私はこの予告編を見るだけでも涙が…(泣)。

 

舞台は深圳。ネットカフェを営む田文軍(ティエン・ウェンジュン、黄渤)には3歳の息子、鵬鵬(ポンポン)がいる。妻の魯暁娟(ルー・シャオジュエン、郝蕾)と離婚し、鵬鵬の養育権は田文軍が持っていて、暁娟は毎週息子に会うことができる。

その日も暁娟が鵬鵬と過ごし、田文軍の元へ鵬鵬を送り届けた。鵬鵬は友達と遊びに出かけたが、一人その場を離れた際に、誘拐されてしまう。

鵬鵬を必死に探す田文軍と暁娟。しかしなかなか見つけることができず、3年が経った。

3年が経ち、鵬鵬が安徽省の農村にいるという情報が入ってきた。田文軍と暁娟は鵬鵬を発見し取り戻す。

鵬鵬は、李紅琴(リー・ホンチン、趙薇)という女のもとで育てられていた。そして、誘拐当時3歳だった鵬鵬は、実の両親である田文軍と暁娟のことを覚えていなかった。鵬鵬にとっては、李紅琴が母親になっていた。

 

と、ここまでが前半の簡単なあらすじです。

 

すごい映画でした。なんて救われない、運命を狂わされた人たちの悲しみは消えることがなく…。衝撃的で、悲しくて。

そして忘れてはいけないのが、これが実話を基にしたストーリーだということ。

中国の社会問題に苦しむ人々をまざまざと描いたこの映画は、中国で大きな注目を集め、法律改正のきっかけにもなったそうです。

中国で深刻な社会問題となっている児童誘拐。そして一人っ子政策の弊害。

この物語の時代からは何年も経っており、現在はかなり状況が改善されてはいるものの、まだまだ苦しんでいる家族がたくさんいること、忘れてはいけないと思います。

公式サイトの「映画の背景」に詳しい解説があり、勉強になります。

映画『最愛の子』オフィシャルサイト -- 映画の背景 --

 

生みの両親は、いなくなった最愛のわが子を必死で探した。

3年後にようやく再会できたのに、わが子は両親のことを覚えていなかった。

育ての母親は、夫が誘拐犯だとは知らなかった。

夫からは、「おまえが妊娠できない体だから、深圳でよその女に産ませた子どもを連れてきた」と聞かされていた。その子どもを、自分の子として愛情をかけ必死に育てた。夫は1年前に亡くなった。

生みの親も育ての親も、わが子を愛する気持ちは無限であり、変わらない。

どちらの立場からも言葉にならない苦しみがひしひしと伝わってきて、観ている方も辛くなってしまうほどでした。

そして待ち受ける結末は、なんて皮肉な…。

 

俳優陣の演技も素晴らしく、育ての親の李紅琴を演じた趙薇(ヴィッキー・チャオ)は圧巻でした。

あんなに美人の女優さんが、この映画では全編ノーメイクで挑み、農村の貧しい女性を体当たりで演じていました。悲壮感と痛切な悲しみがスクリーンを通して痛いくらいに伝わる、すごい演技。日本人女優でこんな骨太な演技できる人、思い当たらないです。レベルが違う。

そして、コメディ俳優だとばかり思っていた黄渤(ホアン・ボー)にも驚きました。こんなシリアスな役もやっていたとは。息子をさらわれた父親の悲痛さ、息子を取り戻すために必死に何でもやる姿が痛切に感じられました。

 

暗い話が多いかもしれませんが、社会問題と運命に振り回される人々の姿を描いた、骨太な中国映画は、私にとってとても魅力的に映ります。

中国語がある程度理解できるなら、中国語のまま鑑賞できるので、日本に居ながらでもネットで観られる作品幅がぐっと広がりますし、

日本語字幕がついた、日本でも観られる作品がもっと増えれば、より多くの人に中国に興味を持ってもらうきっかけにもなると思います。

 

児童誘拐をテーマにした映画は、わりと最近の『失踪、発見』(原題『找到你』)も良かったです。 

minghuabj.hatenablog.com