ベビーシッターにさらわれたわが子を探す母親。2人の対照的な女性を描く映画『失踪、発見』(原題『找到你』)
昨年の国慶節に中国公開されて、すごく観たいと思っていた映画『找到你』。
公開中はタイミングを逃し観損ねて、ようやくネットで観ました。
なんといっても、姚晨(ヤオ・チェン)と馬伊琍(マー・イーリー)の2大女優がW主演。これは観る価値がありました。
『失踪、発見』(2018年中国)
原題《找到你》
監督:呂楽(ルー・ユエ)
出演:姚晨(ヤオ・チェン)、馬伊琍(マー・イーリー)ほか
エグゼクティブプロデューサーとして名監督の馮小剛(フォン・シャオガン)も参画しています。
日本未公開ですが、今年3月の中国映画祭で上映されたそうで、邦題が付いているのですね。
馬伊琍も来日していたんですね、羨ましい!
李捷(リー・ジエ、姚晨)は弁護士。離婚裁判を担当しているが、自身も夫と離婚し、一人娘の親権を元夫と争っている。
シングルマザーで仕事が忙しい李捷は、ベビーシッターの孫芳(スン・ファン、馬伊琍)を雇う。
ある日、孫芳が娘をさらって失踪してしまった。
必死で二人を探す李捷。孫芳の足取りを追いかける過程で、思いもよらなかった孫芳の過去が次々と明らかになっていく。
バリバリのキャリアウーマンである弁護士の李捷と、田舎の農村から出てきた地味で貧しいベビーシッターの孫芳。2人の女性の物語です。
格差が日本よりもずっと激しい中国の現代社会を生きる、対照的な2人の女性を描きながら、彼女たちが抱えている社会問題を啓発するようなメッセージを感じました。
中国の都市部では、女性の社会進出は日本よりも当たり前のことで、共働き家庭の母親がバリバリフルタイムで働いています。役職者に女性が就くことも、日本の会社より多いです。私も北京で働いている時に、中国企業のマネージャークラスの方々には女性が多いなあと実感していました。
その一方で、地方では生活に困窮する女性がたくさんいる。一国の発展した表面だけを見ていては、本質を見損なってしまうのだと感じました。
孫芳は田舎の農村出身で貧しく、日々生きるために必死でした。私が暮らした北京や上海といった大都会にいては実感することも難しいけれど、中国には彼女のような女性が、まだまだたくさんいるのだと思います。彼女たちが幸せになれる日は来るのか。
富める者は富む。その富み方が桁違いの中国だけれど、国内を見渡せば孫芳のように、いやそれ以上に苦しんでいる女性や子どもがたくさんいるはずなのです。ここに向き合っている人がどれだけいるのかと、やるせない気持ちになりました。
ネタバレにならないよう詳しくは書きませんが、ぜひ映画本編を観てもらいたいです。
私はまだ子どもを産んだことがないので、この映画にいくら感銘や衝撃を受けても、きっと自分のことのようには感じられていないのかな、という気もします。
もし自分が母親になる日が来たら、この映画を観ての感じ方が変わるのかもしれません。
冒頭のシーンで、必死にわが子を探す李捷。姚晨の演技は心に迫るものがありました。
姚晨はキャリアウーマンの役が本当によく似合います。演技も上手いですよね。先日観終わったドラマ『都挺好』もすっごく良かった!どハマりして一気に観ました~これもおすすめ。
そして、いつもドラマで明るくはつらつとした女性を演じることが多い馬伊琍が、まるで別人に。結構びっくりの大変身です。馬伊琍の美貌も明るさも一切捨てて、地味で薄幸な農村出身の孫芳を演じていました。
私が好きな中国人女優さんの一人で、彼女の主演ドラマはいくつも観ましたが、特に話題になった『我的前半生』がおすすめです。映画とは全然印象が違います。
映画の原題は《找到你》。直訳すれば「あなたを見つける」で、あなた「你」はもちろん娘、李捷がいなくなったわが子を探す、ということなのでしょう。
それと同時にこの「你」は、孫芳をも指すと受け取ることができるのかもしれません。李捷にとっては何も知らなくて関心もなかった、社会的地位の低い孫芳の人物像が、徐々に分かっていく。そうして、李捷自身の考え方も変わっていくんですよね。
日本では映画祭のみの上映でしたが、ぜひ日本語字幕を付けて日本版を公開してほしいな。印象に残る良い映画でした。