24歳の女性が砂漠を徒歩で踏破。実話を基にした映画『奇跡の2000マイル』
映画鑑賞記録。実話を基にした2013年のオーストラリア映画『奇跡の2000マイル』です。
とても良かった。すごくすごく悲しい場面もあったけれど、映画としては非常に印象的な作品でした。
(下の方に少しネタバレを書いていますので、読みたくない方はご注意を)
※画像をクリックするとAmazonページに飛びます
『奇跡の2000マイル』(2013年豪)
原題:Tracks
監督:ジョン・カラン
Amazon.co.jp: 奇跡の2000マイル(字幕版)を観る | Prime Video
*****
1977年のオーストラリア。24歳のロビン・デヴィッドソンは、一人で旅に出る。アリス・スプリングスからインド洋へと、砂漠を歩いて横断するのだ。その距離2000マイル、約7カ月の旅。親友でもある愛犬のディギディと、調教した4頭のラクダを連れて。資金も物資もないロビンは、ナショナルジオグラフィック誌に手紙を書く。ナショナルジオグラフィックはロビンの旅を支援することを決めるが、同誌のカメラマンリック(アダム・ドライバー)が数回旅の途中で落ちあい、撮影し、誌面でロビンの旅を紹介するという条件が付いた。
砂漠の旅は予想以上に険しいものだった。髪はボサボサ、照り付ける太陽に焼かれ肌は乾燥しボロボロ。なぜ自分はこんな旅を続けているのだろう…孤独に打ちのめされ、何度もロビンは自問自答する。それでもまた一日、海を目指して歩き続ける。
*****
ロビン・デヴィッドソンは実在の人物で、ロビンの回顧録を映画化したものとなっています。
24歳のロビンはちょっと変わり者というか浮世離れしているところがあって、小柄で口数は少なく、本当に一人で歩いて長旅ができるのかという不安も感じさせます。そんな、いつも遠くを見ているような個性的なロビンのキャラと、一匹の犬、4頭のラクダ。だだっ広い砂漠。淡々と、旅は進んでいきます。冒険と言えば冒険なのだけれど、派手なアドベンチャー要素はありません。
壮大で厳しい自然を相手に、 時にはなすすべもなく立ちすくむこともある。それでも、旅は良い物だと、私は思います。どんな形であろうと、誰と一緒であろうと。この旅を通して、24歳のロビンは何を思い、何を得たのだろうか。
たとえ何も得られなかったとしても、自分探しの答えが出なかったとしても。この経験は何物にも代えがたいだろうし、その後の人生に大きな影響を与えたことではないかと思います。
携帯電話もなかった時代、地図とコンパス、そして自らの足を頼りに一歩一歩踏みしめながら前に進んでいった女性。その勇気には拍手を送りたいです。
アボリジニとの交流のシーンは好きです。映画の冒頭でも記述がありますが、先住民の描写は当時の状況に基づいています。
ロビンを演じたミア・ワシコウスカが良かった。オーストラリア出身の彼女は、この映画にもきっと熱い思いを持って挑んだのではないかと思います。映画ではなく、本当にロビンが乗り移りそこで旅をしているようにしか見えませんでした。
時間のある時にゆったりと観たい、一風変わった、けれどもリアルなロードムービーでした。
【ネタバレ含む感想】
私が辛かったのはこのシーンに尽きます。
愛犬ディギディの死。
いつもロビンを支えてきた相棒であり親友であったディギディ。砂漠で寝る時もロビンに寄り添って寝てくれるし、ロビンにとってはかけがえのない癒しだったはずです。
そんなディギディが、ある野宿の夜、ロビンが寝ている間に落ちていた毒を舐めてしまいます。
ゼイゼイと苦しそうに息をするディギディ。苦しむディギディを見ていられなくて、ロビンは銃でディギディを殺してしまいます。
大好きな愛犬を、自分の手で殺してしまい呆然とするロビン。悲しみに暮れ、数日は歩く気にもならず放心状態でその場にとどまってしまいます。
まだ生きられたはずの命が失われてしまった悲しみは、想像もできないほど大きいだろうと思います。自分をいくら責めても責めたりない。
ロビンがディギディを撃つシーン、私も呆然として観ていました。辛くて辛くて、涙が。もし自分だったらと思うと…胸が張り裂けそうです。
ディギディもロビンとラクダたちと、ゴールの海を見てほしかった。無念でなりません。
ディギディとの別れの後、リックと再会。リックはロビンに、読者からのファンレターを渡します。そこには子どもの絵で、ロビンとラクダたち、そして黒い犬が描かれていました。
その黒い犬は、もういなくなってしまった。このシーン、涙が止まりませんでした。
犬が苦しむのはたとえ映画であっても…辛いですね。
ディギディがロビンと旅を共にし、お互いを信頼し寄り添う姿がとても可愛らしく微笑ましかっただけに、余計こたえました。
犬を飼ったことのある人には、かなり耐えがたいシーンでした。