元・ふわふわ北京日和

北京住み→日本に本帰国。現在は中国に関係あったりなかったりの気ままなブログ。

あの悲劇に至るまでの裏側に迫る ドラマ『倒壊する巨塔-アルカイダと「9.11」への道』

Amazonプライムでドラマ『倒壊する巨塔ーアルカイダと「9.11」への道』を観ました。

2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件を題材に、アメリカ政府の裏側に切り込んだ社会派ドラマです。フィクションではありますが事実を基にした内容で、非常にリアリティをもって描かれており、見応えがありました。9.11の裏側についてはいろいろと文献を参照したこともあり目新しい話ではなかったものの、やはり何度見ても、やるせなさとショックを感じざるを得ません。

 

『倒壊する巨塔ーアルカイダと「9.11」への道』(2018年米)

原題:The Looming Tower

出演:ジェフ・ダニエルズ、タハール・ラヒム、ピーター・サースガードほか 

現在、Amazonプライムで全話見放題配信中。全10話、シーズン続編はありません。

 

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↑ジョン・オニール(ジェフ・ダニエルズ)。

 

物語の始まりは1998年。ケニアタンザニアアメリカ大使館で、アルカイダによる爆撃事件が発生した。

FBIに新人の若い捜査官アリ・スーファン(タハール・ラヒム)が、対テロ部門I-49に赴任してくる。スーファンはレバノン出身のアメリカ人で、アラビア語に精通し、部門長のジョン・オニール(ジェフ・ダニエルズ)の信頼を勝ち取って捜査にあたった。オニールやスーファンらはアメリカがテロの危険にさらされていることを察知していたが、CIAアレック支局長のシュミット(ピーター・サースガード)らは、FBIとの連携を拒み、共有すべき情報を隠し続ける。

無情にも時は刻一刻と経ち、ついに2001年9月11日、悲劇が…。

 

ピュリッツァー賞を受賞した同名小説が原作。こちらはまだ読んでいませんが、ぜひとも読んでみたいです。 

 

 

このドラマで触れられている主な事件は、

・1998年 アメリカ大使館爆破事件

アメリカ大使館爆破事件 (1998年) - Wikipedia

・ 2000年 米艦コール襲撃事件

米艦コール襲撃事件 - Wikipedia

・2001年 アメリカ同時多発テロ事件

アメリカ同時多発テロ事件 - Wikipedia

 

このドラマはあくまでも、事実を基に描かれた”フィクション”。しかし、フィクションとは言えど、かなりリアリティをもって描かれていると思います。とはいえ、どこまで真実なのかは分かりませんが。

しかし、当時の映像がたびたび使われていて、非常に現実味を持たせていました。2004年に行われた公聴会でライス国務長官やCIAテネット局長の証言、当時のブッシュ大統領の会見、テロリスト(実行犯)が映った空港の映像、そしてあのあまりにも衝撃的で痛ましすぎる、事件発生の映像…。

 

FBIもCIAも、アメリカを守るためという愛国心は変わらない。しかし、その手段や方針が違っていたために連携が取れず、相互不信に陥り、互いを不要なライバル心というフィルターにかけて見てしまっていた。その、連携が取れていなかったという極めてアメリカの内輪的(に見える)な要因が、皮肉にも9.11の悲劇につながってしまった。このドラマは、主にFBIとCIAの確執を浮き彫りにしながら話を進めています。

当時のFBIとCIAの確執については、『ニューヨーカー誌の世界』エピソード1でも取り上げられていたのを思い出します。 

minghuabj.hatenablog.com

 

現在このドラマを観ている私たちは、既に9.11に起こったことを知っています。だから、この事態がどんな悲劇を招いてしまうかが分かっている状態でドラマを観るので、ものすごくやりきれないし、特にCIAに対して、腹立たしさがこみ上げます。

特に、シュミットを慕うCIA局員ダイアンに対してものすっごく腹立ちますね。そして当時の政権の重要人物だった、ライスとラムズフェルドもひどいです。怒りを覚える。

 

FBIのジョン・オニールは、実在の人物です。オニールの人物像が実際どうだったのかはわかりませんが、ドラマでは、ベテランで有能な熱血漢の仕事男。しかしその性格ゆえに敵を作りやすく、また私生活でも複数の女性と不倫をし金銭面でもルーズな人でした。部下にはとても慕われていました。

ジョン・P・オニール - Wikipedia

オニールの部下であったFBI捜査官のスーファンが、結局は一番の良心だったのかな、と思います。

レバノン出身でイスラム教徒であり、アラビア語が堪能。自らがイスラム教徒であるからこそ、コーランさえも読んでいない、イスラム教の教えを勝手に解釈し多くの無実の人々を犠牲にしたテロリストが余計許せなかったのだろう、と。エピソード10の取り調べのシーンでは泣きそうになりました。

 

このようなジャンルの、”アメリカが敵に立ち向かう”類の作品って、どうしてもアメリカすごい!的な描かれで強調されがちで、シラケてしまう時も少なくないです。

しかし、このドラマは、アメリカの黒い闇、知られたくない部分にも切り込み、かつムスリムやテロリストの描写も、ドラマという限られた枠の中でできるだけ客観的に描かれているという印象を受けました。 

Amazonさん、このような作品を配信してくれてありがとう!関連記事や本をもっと読んでみたいです。

 

Amazon.co.jp: 倒壊する巨塔-アルカイダと「9.11」への道 シーズン1を観る | Prime Video