元・ふわふわ北京日和

北京住み→日本に本帰国。現在は中国に関係あったりなかったりの気ままなブログ。

中国で多くの共感を呼んだ大ヒットドラマ『都挺好』。大いにハマりました

2019年3月から中国で放送され、とても話題になり大人気だったドラマ『都挺好』。中国にいる間に観終わっていたのですが、感想を書きそびれていましたので今更ながらアップ。

ある家族の物語を通して、現代の中国人が抱える問題を浮き彫りにしています。

いやぁ、面白かった。全46話。一気に観ちゃいました。私は中国の動画配信アプリ(テンセント)で観ましたが、最近YouTubeに上がっているのも見つけました。

baike.baidu.com

出演:姚晨(ヤオ・チェン)、倪大紅(ニー・ダーホン)、郭京飛(グオ・ジンフェイ)、楊祐寧(ヤン・ヨウニン)、李念(リー・ニエン)、高鑫(ガオ・シン)、高露(ガオ・ルー)ほか

 

舞台は蘇州。蘇さん一家の家族の物語です。

父、母、2男1女の5人家族。父は定年退職して隠居生活。子ども3人は独立しています。

物語は、蘇家の母が急逝し、その知らせを受けて家族が集まるところから始まります。

 

<主な登場人物>

・蘇明哲(スー・ミンジャー、高鑫)…第一子の長男。アメリカ在住、結婚して娘がいる。穏やかな性格だが面倒を避けたがりプライドが高く、優柔不断。

・蘇明成(スー・ミンチェン、郭京飛)…第二子の次男。既婚。母親大好きのマザコンだが妻には頭が上がらない。妹の明玉と犬猿の仲。

・蘇明玉(スー・ミンユー、姚晨)…第三子の長女。18歳で家を出てから家族とは距離を置いている。バリキャリで仕事命、高収入。

・蘇大強(スー・ダーチャン、倪大紅)…父。定年退職したばかり。恐妻家で、何でも妻の言いなりで自分の意見は持たず。妻に先立たれてからはわがまま放題、子どもたちを振り回す。

 

主に長女の明玉を主人公に描かれます。明玉たちの母は、極端な男尊女卑でした。中国語では「重男軽女」という言葉で表されます。

幼い頃から、兄二人には甘くえこひいきの一方、明玉は母親に見放されて育ちました。決して裕福ではなかった蘇一家。兄たちには無理してでもお金をつぎ込むのに、明玉は参考書を買うお金すらもらえない。父に助けを求めても、母に頭が上がらない父はまるで頼りない。明らかな男女差別が母親によってなされていることに、私は理解に苦しみました。母親だって同じ女なのに…と。(男尊女卑だけではない、母親が異常なほどに明玉を嫌った理由は、後に明かされますが)

長兄の明哲は優しいが、明玉の気持ちまでは汲み取れなかった。ママ大好きな次男の明成は、明玉を嫌う。

とにかく、そうやって母親に見放され家庭にも居場所がないと感じていた明玉は絶望し、18歳で家を出て家族とは距離を置き、自分の足でキャリアを築きビジネスで成功しました。

母親を憎んでもいた明玉は、母親が亡くなっても悲しむ様子すらない。家族とは縁を切ったかのように無関心を貫きます。

 

一方、家族の柱であった妻を失った父親の大強は、魂が抜けたような状態に。それまで暮らしていた家は、「妻の気配を感じるのが嫌だ」なんていう理由で住まないと言い張ります。

大強は定年退職し、そろそろ子どもが面倒を見てやらなければいけない年齢。さて、親の介護を誰がやるのか。

明哲はアメリカ在住、自分が長男だからと口では責任感を出しながらも行動が伴わない。大強は明成の家に住むことになるが、共働きの明成夫妻と生活スタイルが全く合わずにトラブルが絶えない。家族に見放されて育った明玉は、家族とは距離を置いている。

そんな、ばらばらの蘇一家ですが、あらゆる問題に直面しながら前に進んで行きます。

 

蘇家の男性陣は、はっきり言って、ダメ男ばっかりです(笑)。

何と言っても父親が最強です。わがままで頑固で偏屈でケチで、ダメダメ親父。こんな父親がいるのか、と驚いてしまいますが、いるでしょうね~(笑)。俳優さんの演技も上手すぎます。

そして、うわべを取り繕うばかりの明哲、親のすねかじりの明成。このダメ男たちに、観ているこちらはイライラさせられること間違いなしです。

対して、明玉をはじめ女性陣はしっかりしていて強い。どこだったか、あるトラブルが起きた時に明玉が見事に解決を図り、「三人の男(大強、明哲、明成)が揃っても明玉にはかなわない」みたいなセリフがありましたが、それくらい、甘やかされて育った蘇家の男よりも愛情に飢えて育った明玉の方がしっかりしています。

明哲の妻も、明成の妻も、夫に比べてずっとたくましく、強いです。

男尊女卑の家庭を主役に据えながら、描く女性像が男性よりも強いというのが、なんだか皮肉で面白い。

 

このドラマは、現代の中国で多くの人が抱えているであろう問題を丁寧に描いたことでも共感を呼んでいます。

親の介護。定年後の生活。孤独老人、そこに付けこむ金融詐欺や結婚詐欺。親との同居。親の認知症。仕事。離婚。などなど。

そして、日本の家族観とはまた違った中国人の考え方を学ぶ点でも面白いです。日本人からすると驚きのこともたくさん。

親に家を買ってやったり、家政婦を雇ってあげたり、それを「やってもらって当たり前」のように受け取る大強、図に乗ってわがまま放題。もちろん皆が皆そうではないのでしょうけれどね。

中国の“今”をたくさん垣間見れるという点でも、このドラマには大きな魅力があります。

 

私は、姚晨の演じる明玉がとても好き。最初は傲慢な人物だと思ったけれど、家族に対して複雑な感情を抱きながらも、決して冷徹で自分勝手ではない、実は懐の深い明玉にいつのまにか共感していました。

最後の方、認知症になった父と歩き明玉が号泣しながら話しかけるシーンでは、私も涙がこらえきれませんでしたよ…。

このドラマを観て、それまで大して好きではなかった姚晨の印象がガラッと変わりました。実力派の良い女優さんなんだな、と。

この後に観た映画『找到你』も良かったです。

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日本では放送orリリースされていませんが、中国語が中級レベルでも十分楽しめると思います。ぜひおすすめしたい中国ドラマの一つです。