元・ふわふわ北京日和

北京住み→日本に本帰国。現在は中国に関係あったりなかったりの気ままなブログ。

家族に扮した北朝鮮スパイを描く、映画『レッド・ファミリー』

映画鑑賞記録。2013年の韓国映画『レッド・ファミリー』を、Amazonプライムで観ました。

韓国に潜入している北朝鮮のスパイを題材にした映画です。スパイ映画というともっとハードボイルドなイメージがあったのだけれど、この映画はまぁ、ハードと言えばハードかもしれないけれど、どことなくハートウォーミングな空気すら漂い、シリアスながらセンチメンタルというか、絶望的な希望というか…こう来るか!と、かなり意外な見せ方をする作品だと感じました。

好きか嫌いかは別にしても、結構衝撃的で印象に残る映画でした。

 

『レッド・ファミリー』(2013年韓国)

原題:붉은 가족

監督:イ・ジュヒョン

出演:キム・ユミ、チョン・ウ、ソン・ビョンホほか

Amazon.co.jp: レッド・ファミリー(字幕版)を観る | Prime Video

予告編↓ 

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妻・スンへ(キム・ユミ)、夫・ジェホン(チョン・ウ)、祖父・ミョンシク(ソン・ビョンホ)、娘・ミンジ(パク・ソヨン)は、周りが羨む幸せそうな4人家族。しかし、それは表の顔にすぎない。4人は北朝鮮から送られたスパイチームで、家族を演じながら、祖国からの任務を遂行している。

そんなスンへ達ニセ一家の隣には、夫婦喧嘩が絶えず、いつも騒がしい一家が住んでいる。隣の一家を嫌悪し見下しているスンへ達だったが、交流が増えるにつれ、心を動かされていく。

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韓国に潜入している北朝鮮スパイの話は、事情に疎い私には真偽のほどは分かりませんが、それでもネット上で聞こえてくることがあったりなかったり。

それが、家族を演じているという設定がまず驚き。4人は家族を演じて韓国社会で暮らしているわけですが、北朝鮮に残してきた本当の家族を常に想っているんですよね。志願してスパイになったのか、強制的にスパイにされたのかは分からないけれど、この映画のスパイたちは、任務に失敗すると、自分の命どころか北朝鮮に残してきた家族までが危険にさらされる。なので、任務は絶対完遂しなければならない。

故郷の本当の家族を想いながら、韓国で他人とニセの家族を演じている4人。この時点でもう、感情がついて行かなさそう…。

そんなニセ家族4人の隣には、普通の韓国人家族が住んでいます。これがまた、金遣いの荒い妻と、家庭を顧みない夫のケンカが絶えず、毎日騒がしい。スンへ達ニセ一家は、この隣の一家を「資本主義の馬鹿どもが」などと罵り、見下し、嫌悪しています。

しかし、そんなお隣さん達との付き合いが増えるにつれて、心を動かされていくスパイ一家なのです。スパイでも、普通の家族に憧れ、故郷に残してきた家族と平凡に暮らせたらどんなに幸せか。そんな思いがすごく伝わってきました。

 

スパイの任務を遂行しながら祖国に忠実なニセ一家の4人。しかし、韓国で暮らす時点でもう、どこかで祖国への疑問を感じていたのではないかな、と思います。

この映画はクライマックスがやはり一番の見どころだと思うのですが、確かに最後の演出にはあっと驚かされました。どこかしら滑稽にさえ見えるのだけれど、それがものすごく皮肉的で、強烈な印象を残してくれました。

 

この映画にどれだけリアリティがあるのかは、正直分かりませんが、完全なフィクションとも思えないのがまた恐ろしくもあり…。これが実話だと言われれば納得してしまいそうなほどです。韓国と北朝鮮の問題は自分が不勉強なのもありますが、本当に複雑で難しい。

また観たいとはあまり思わないけれど、観てよかった映画です。