ラミ・マレック主演のテクノ・スリラードラマ『MR.ROBOT / ミスター・ロボット』が傑作でした
Amazonプライムで、 ドラマ『MR.ROBOT / ミスター・ロボット』を観終えました。全4シーズン。
映画『ボヘミアン・ラプソディ』で世界的に有名になった俳優、ラミ・マレックが主演です。
これ、度肝を抜かれるぶっ飛びドラマでした。めちゃくちゃ面白かった。ドラマの1話1話が濃厚で作り込まれていて、毎回映画を観ているかのような重厚感がありました。いきなりバイオレンスなシーンがぶちこまれたり、思いもよらなかった種明かしが飛び込んできたり。現実と幻想のはざまでどちらにいるのか分からなくなり、視聴者は弄ばれている感覚を覚えます。
そんなドラマなので、「気軽に観る」のには向いていません。集中力が必要で、なかなか頭が疲れます。そして、シーズン4の最終話を観終えた時は、ものすごい安堵感がありました。ふぅー、終わった、と(笑)。それはとても心地いいものでしたけれどね。
『MR.ROBOT / ミスター・ロボット』全4シーズン(2015~2019年米)
企画・製作総指揮・監督・脚本:サム・エスメイル
出演:ラミ・マレック、クリスチャン・スレーター、カーリー・チャイキン、ポーシャ・ダブルデイほか
↑画像をクリックするとAmazonページに飛びます。これはシーズン1。Amazonプライムでは現在、全4シーズンが見放題対象になっています。
↑YouTubeでは各シーズンの予告編動画が数パターンアップされています。
舞台はニューヨーク。エリオット・オルダーソン(ラミ・マレック)はネットセキュリティ会社「オールセーフ」でセキュリティエンジニアとして働いている。人付き合いが苦手で寡黙な彼は、幼なじみで同僚でもあるアンジェラ(ポーシャ・ダブルデイ)以外には心を閉ざして生きていた。昼間はオールセーフで黙々と働くエリオットは、実は天才的なハッキング技術を持ち、夜は身近な人のSNSをハッキングして隠された私生活を盗み見たり、ネット犯罪を粛正したりして自己満足を得ていた。
そんなエリオットに、謎のハッカー集団「f・ソサエティ」のリーダーである中年の男「ミスター・ロボット」(クリスチャン・スレーター)が接近してくる。f・ソサエティは、オールセーフの最大の顧客であり、世界を牛耳る巨大コングロマリット「Eコープ」社の金融データを破壊して世界に革命を起こし、富の再分配を引き起こそうとしていた。ミスター・ロボットは、エリオットをf・ソサエティにスカウトする。
いやぁ、本当に面白かった。傑作でした!もう最高。これまで観たドラマの中で、個人的1位かもしれません。
シーズン1から、最終のシーズン4まで見事でした。シーズンが進むにつれて予算が増えたのか(?)、どんどんクオリティが高くなっているように感じました。シーズン4なんて、1話1話のクオリティが本当に高く作り込まれていると思います。本当に、毎話映画を観ているみたい。
そして、こんなに集中力がいるドラマも久しぶり(笑)。シーズン1を観終えて、なんだか自分は理解できていないんじゃないか…と思い、シーズン1は2回観ました(笑)。
1話1話に、たくさんの伏線が巧妙に張られているんです。それが、毎シーズン思わぬところで種明かしをいきなり「ドン!」と持ってきて、呆気に取られると同時に拍手喝采ですよ。「ああ、やられたー!」「そうだったのかー!」と心の中で何度叫んだことか。
シーズン1でハマって、シーズン2の前半はちょっと失速気味に感じるというレビューも多いようです。しかし、シーズン2の後半からまた面白くなりますので、見続けて損はないのでは。シーズン2クライマックスの種明かしにはやられました。
エリオットは人と上手く付き合えない根暗な性格で、不安な気持ちを抑えるため、モルヒネが手放せないドラッグ常習者でもあります。精神科医のクリスタの所へカウンセリングにも通っています。
そんなエリオットは凄腕のハッカー。IT用語もところどころ出てきますが、これは決してテック系のドラマにはカテゴライズできないです。ITに詳しくなくても問題なく楽しめますし、どちらかというとスリラー、サスペンス的な要素が強いです。
ハッキングのシーンはかなりリアルに作られているそうですよ。
映像、構成、音楽の使い方も非常に凝っています。ところどころ遊び心もあって、私はもう、制作者の手のひらの上で転がされている感覚でした(笑)。
レビューでも特に評価の高いシーズン3の第5話は、1話まるまるワンカット長回し風。これは観ていて本当にワクワクしました。シーズン4の第7話は、ごく限られた空間だけで話が進行して、こちらも見ごたえがありました。
ただ、集中力が必要でぐいぐい脳を刺激してくるし、観る人は選びそうなので、皆にお薦め!とまでは言えません(笑)。バイオレンスなシーンも少なくないし、殺人もしょっちゅう。暴力的な描写が苦手な人は、目をそむけたくなる場面も多々あります。
そしてやはり、キャストが最高。
映画『ボヘミアン・ラプソディ』で一躍世界的なスターとなったラミ・マレックが、まだ有名でない頃にキャスティングされたMR.ROBOTのエリオット。彼以外のエリオットはあり得ないと思えるほど、はまり役でした。
不安そうな目をした根暗なエリオットの繊細な表情や心理描写。ラミ・マレックの演技は凄まじかった。
そしてそして、個人的に嬉しいサプライズだったのが、ミスター・ロボットを演じるクリスチャン・スレーター。『トゥルー・ロマンス』や『ブロークン・アロー』など、90年代の映画で有名なハリウッド俳優ですよね。私が映画にハマり出した頃、好きな俳優の一人でした。しばらくはスランプだったのかヒット作に恵まれず、彼のこともすっかり忘れていましたが(笑)、こんな形でまた見ることができてとても嬉しい!良いオヤジ風になっています。
インタビュー記事を見つけました↓。
その他のキャストも皆圧巻でした。f・ソサエティの女性ハッカー、ダーリーン(カーリー・チャイキン)が特に好きです。存在感のある風貌がとても印象的。
ホワイトローズ、タイレル・ウェリック&ヨアンナ・ウェリック、クリスタ、レオンあたりが良い味出していました。
そして、シーズン2から登場するFBI捜査官のドミニク(通称ドム)を演じるグレース・ガマーは、なんとメリル・ストリープの娘さんなのだそうです。
いやぁ、このドラマを企画したサム・エスメイル監督、本当にすごい。
どえらいものを見せてもらいました。スリルをありがとう!
Amazon.co.jp: MR. ROBOT / ミスター・ロボット シーズン1 (字幕版)を観る | Prime Video
空の上で起きた危機。実話を基にした映画『フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話』
※2020年10月日本公開に伴い、邦題部分を修正しました。(2020年10月28日追記)
映画鑑賞記録。昨年(2019年)中国で公開され話題になっていた『中国機長』(邦題『フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話』)をネットで観ました。
「2019東京・中国映画週間」でもお披露目されたようなので、それで邦題も付いているのですね。
2018年5月に中国で実際に起きた、飛行中に飛行機の操縦室のフロントガラスが破損し、通常運転ができなくなるという事故を基にした話です。ちょっと待って、2018年5月に起きた事故を題材にして2019年9月末に公開されたって、スピード感すごい…。
こういう作品はやはり大画面で観るべきだなぁ~と、小さなPCの画面を見つめながら思いました(笑)。スリルあり、映画らしい映画でした。
『フライト・キャプテン 高度1万メートル奇跡、奇跡の実話』(2019年中国)
原題『中国機長』(《中国机长》)
監督:劉偉強(アンドリュー・ラウ)
出演:張涵予(ヂャン・ハンユー)、欧豪(オウ・ハオ)、杜江(ドゥー・ジァン)、袁泉(ユエン・チュアン)、張天愛(ヂャン・ティエンアイ)、李沁(リー・チン)ほか
監督の劉偉強氏、私の大好きな香港映画『インファナル・アフェア』の監督さんでしたか!
予告編↓
↑この日本版予告編の作り方はちょっと煽りすぎな気がします。まあ、日本の映画プロモーションあるあるですが😅
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重慶発ラサ行きの四川航空3U8633便。点検を終え乗客を乗せ、いつものように離陸したその飛行機は、それぞれの乗客の思いを乗せて上空を飛行していた。
高度1万メートル弱の高空を飛行中、突然、操縦室のフロントガラスにひびが入る。みるみるうちにガラスは破損する。副操縦士の体は半分外に投げ出される。計器は破損し、地上とは連絡が取れない。気圧と温度はみるみるうちに低下し、機体は大きく揺れ、乗客はパニックに陥る。
119名の乗客と9名のクルーたち。果たして無事に生きて着陸できるのか。
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筋書きはだいたい予想は付くのだけれど、飛行機という特殊な狭い空間の中での危機は、映像で見るとやはり迫力とスリルがありました。これぞ映画だなあと思えるような、良い映画だったのではないかと思います。
機体が大きく揺れ、機内は混乱し、乗客たちはパニックに。大きなスクリーンで観ていれば、きっとかなり臨場感があったでしょうね。
搭乗前のクルーやそれぞれの乗客の様子。飛行機が一回飛ぶために、こんな準備があるんだというルーティンがなにげなく描かれていたり、これだけ多くの人が支えて初めて安全に離陸・着陸ができるのだということが分かったりして良かったな。飛行機や空港が好きな人はワクワクするはず。
そして、観ていて「中国っぽいわぁ~」となんだか微笑ましくなってしまうような人たちの描写に思わずクスリ(笑)。機内食の小袋を隠して、余計にもらったり。団体旅行客のあのダサい(笑)帽子や、離陸前に携帯電話の電源を切るようCAさんに注意されてごねる人など。あるあるです。
ガラスが破損し、上空で副操縦士の体が半分投げ出されるシーンは驚きでした。こんなことが本当にあったなんて、絶句です。文字通りの奇跡だったのだなぁとつくづく感じました。
機長をはじめ、クルーの皆さんは自分も怖くて仕方がなかったはず。それでも冷静さと正気を保ち、乗客の安全を第一に考え、行動し、混乱を抑えた彼らのプロ意識には敬服します。
参考;
劉機長役の張涵予は渋く、安心して見ていられる俳優さんですね。
CAチーフの畢男(ビー・ナン)を演じる袁泉が好きです。ドラマ『我的前半生』や映画『いつか、また』でも印象的な役どころでした。畢男が混乱する乗客たちに向かって言うセリフ「わたしたちは皆、誰かの娘、息子、父、母です。一緒に帰りましょう」は良かったなぁ。
張天愛、李沁など、CA役の女優さん達は皆美人揃いで、目の保養になります(笑)。
そして、中国の有名俳優がさらっと一瞬チョイ役で出てくる出てくる。陳数(チェン・シュー)、楊穎(アンジェラベイビー)、関暁彤(グアン・シャオトン)、朱亜文(ジュー・ヤーウェン)など。豪華ですな。
私は飛行機に乗ってどこかに行くのは大好きです。でも、こういう映画(しかも実話)を見ると、ちょっとだけ…怖くなったりもして?
まあ、どんな交通手段を使ってもいつどんな事故が起こるか分からない可能性はあるわけだから、あまり心配してもいられないんですけどね😅
※追記:2020年10月、日本公開されました。
1カ月で10億元を使い切ることはできるのか?中国のコメディ映画『西虹市首富』
2018年の中国映画『西虹市首富』をネットで観ました。ネットでレビューを見かけて、面白そうだなぁと気になっていたコメディ映画です。まあまあ笑えました。が、まず日本には来ないだろうな。
『西虹市首富』(2018年中国)
英題:Hello Mr.Billionaire
監督:閆非(イェン・フェイ)、彭大魔(ポン・ダーモー)
出演:沈騰(シェン・トン)、宋芸樺(ビビアン・ソン)ほか
予告編↓
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中国にある架空の都市、西虹(シーホン)市。弱小サッカーチームのゴールキーパー、王多魚(ワン・ドゥオユー、沈騰)は、中年に差し掛かり失敗も増え、チームから解雇されてしまう。そんな時突然、台湾にいるという親戚のおじいさんが亡くなり、莫大な遺産を遺していることを知らされる。その遺産を王多魚に相続するというのだが、そのためにはまず「1カ月で10億元を使い切る」というミッションが課される。
10億元(現在約152億円)の使い方には、「西虹市内で、合法なやり方でお金を使い切ること」「固定資産を残してはいけない。つまり、家や車を買うのはダメ」「寄付など他の人に与えてはダメ、全て自分のために使う」などの条件が付く。
しかし、思う存分散財しても、なかなかお金は減らない。一夜にしてビリオネアとなった王多魚はどうなる…?
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中国の人気喜劇団、「開心麻花」制作のコメディ映画です。おバカなシーンもたくさんあり、分かりやすい笑いが満載でした。劇場で、多くの中国人観客が笑いながら観ている光景が容易に想像できます。私個人としては、おバカなコメディは中国映画、洋画に限らずあまり好きではないのですが、まあこのくらいなら許容範囲かな😅実際、自分も笑っちゃいましたし。サッカーの試合のシーンの円陣攻撃(?)は面白かった。
王多魚はあらゆる贅を尽くし10億元を使い切ろうとしますが、想像もつかない大金、なかなか減ってくれません。失敗することが目に見えていそうな、実現性の低いアイディアに投資したりもするのですが、投資して成功すると逆にお金が増えてしまう。爆笑。
しかし、お金と付き合う中で、お金よりも大事なものに気付いていく…のでしょうか( ´艸`)
カッコいい俳優さんは一人も出てきませんが(あ、"西虹の王力宏"はいたがカッコよくはない(笑))、こういう中国映画もたまには良いですね。開心麻花、覚えておこう。
📝この映画で覚えた中国語📝
守门员(shŏuményuán)…ゴールキーパー
打水漂(dǎ shuǐpiāo)…金銭・財貨を浪費する、無駄遣いするたとえ
园丁(yuándīng)…庭師、園芸職人
不劳而获(bùláoérhuò)…労せずして利益を得る。働かないで他人の成果をわがものにする。
倾家荡产(qīngjiādàngchǎn)…家の財産を使い尽くす。破産する。
【奈良】明日香村で愛犬とぶらり散歩~石舞台古墳&飛鳥板蓋宮跡
奈良の明日香村へ、愛犬ぽーを連れてドライブ🚙
明日香村は日本史の教科書でもおなじみ、かつては都も置かれていた「飛鳥」の地です。
見どころがたくさんありすぎて、半日ではとても回り切れず、今回はぽーと散歩しながら石舞台古墳と飛鳥板蓋宮跡に行ってみました。
遺跡の多いこの一帯は「国営飛鳥歴史公園」として整備されており、「石舞台地区」「高松塚周辺地区」など主に5つのエリアに分けられています。
https://www.asuka-park.go.jp/about/
この歴史公園内に遺跡や遺構がザックザクあります。古墳ファンにはたまらないのでは。
有名なものだけでも石舞台古墳、高松塚古墳、キトラ古墳。まずは石舞台地区にある石舞台古墳へ行きました。
近くの駐車場に車を停めて散策。
入場料は大人300円。犬連れに関しては特に案内は見当たらず、受付で聞いてみたところ「大丈夫ですよ」と言っていただけました。ありがとうございます!
↑入口の所。
↑写真で見たまま!の石舞台古墳。言われなければこれが古墳とは分からないですよね~。
石舞台古墳とは;
日本最大級の石室をもつ、飛鳥を代表する古墳。7世紀初めの築造で、1辺約50mの方墳だったが、早い時期に墳丘の盛り土がはがされ、巨大な横穴式石室がむき出しになってしまった。露出した石は約30個、総重量は2300tと推定されている。被葬者は不明だが、蘇我馬子の墓の可能性が高いといわれている。
(「明日香村観光マップ」より)
↑ぽー君と古墳。いつものことながら、ぽー君は全くカメラ目線をくれません🐶この古墳そんなに大きくないのに、ぽー、ちっちゃいな(笑)。他にも犬連れのお客さんを見かけました。
↑反対側から。
↑中に入れます。ちょうどガイドさんが説明をしているところでした。
↑中に入って上を見上げてみる。
蘇我馬子のお墓(かもしれない)かぁ。なんだかロマンを感じます(笑)。
↑敷地内はちょっと散歩できる感じの広さです。
↑石舞台古墳の復元石棺。
石舞台古墳を含む石舞台地区。古墳エリアの外は広い芝生になっていて、ボール遊びや自転車遊びなどをする親子、ピクニックみたいに芝生でくつろぐ人、犬の散歩をする人など、皆思い思いに体を伸ばしてくつろいでいました。
芝生をぐるりと一周、ぽーを連れてお散歩。平和です。
↑石舞台地区にある、レストラン兼ショップ「明日香の夢市」。ここで観光マップをもらいました。
↑お店の前にて。体毛の色が砂利に溶け込んでるし(笑)。
石舞台地区から車で少しだけ移動し、飛鳥宮跡へ。
ちなみに、明日香村では数カ所レンタサイクルを借りられる場所があって、自転車で回っている人を何組も見かけました。
そうなんですよね。村内には見所が点在しているけれど、徒歩だとちょっと疲れる、しかし車は小回りがききにくいし駐車場を探すにも迷う…。自転車で回るのが一番効率が良い気がしました。
●飛鳥宮跡 伝飛鳥板蓋宮(いたぶきのみや)跡
乙巳の変(大化改新)のはじまりの舞台となった場所で、皇極天皇の宮殿跡です。
↑この通り、のどかです。平和です。
かつてはここに都があったのだなぁ。それにしてものどかなことよ。
飛鳥宮跡をちょっと北に行き、飛鳥寺近くの所にある信号にびっくりしました。
↑進め20秒、止まれ4分🚥
止まれが長い!急いでいる時に出会いたくない信号です😅
今回はこれだけしか行きませんでしたが、明日香村は見所がたくさんあります。古代ロマンが好きな人にはたまらないですね。
ところどころに古民家をリノベーションしたようなカフェやショップ、ゲストハウスなども見かけました。
またゆっくり散策してみたいエリアです。
https://www.asuka-park.go.jp/area/ishibutai/tumulus/
飛鳥宮跡 伝飛鳥板蓋宮(いたぶきのみや)跡
https://www.asuka-park.go.jp/midokoro/remains/
交響楽団の舞台裏をコミカルに描く、ガエル・ガルシア・ベルナル主演ドラマ『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』
Amazonプライムオリジナルのドラマ『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』全4シーズンを観終えました。
ニューヨークの交響楽団を舞台に、人間模様を描くドラマです。面白かった!
主人公の天才指揮者ロドリゴを演じるのは、私の好きなメキシコ人俳優ガエル・ガルシア・ベルナル!彼の魅力がたっぷりで、とても楽しく鑑賞しました。彼は本作で、2016年のゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞しています。
『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』全4シーズン(2015~2018年米)
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ローラ・カーク、バーナデット・ピーターズほか
Amazon.co.jp: モーツァルト・イン・ザ・ジャングル シーズン1(字幕版)を観る | Prime Video
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歴史ある名門、ニューヨーク交響楽団に、新たに天才指揮者ロドリゴ・デスーザ(ガエル・ガルシア・ベルナル)が就任する。自由奔放で我が道を行く破天荒なロドリゴは、その情熱ゆえに騒ぎを引き起こし周囲を振り回す。一流のオーボエ奏者を志すヘイリー・ラトリッジ(ローラ・カーク)はチャンスを掴もうと、交響楽団入りを目指す。
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元ニューヨーク・フィルハーモニックのオーボエ奏者であるブレア・ティンドールによる自伝が原作となっており、交響楽団の裏を覗き見ているようで興味深いです。
楽団内の色恋沙汰や、限られた椅子を争うライバル関係。一流奏者たちの稼ぎや労働条件が実はあまり良くなく副業は当たり前なことといった内情。普段知ることのないクラシック界の舞台裏が、とてもコミカルでハートフル、時には切なく描かれています。
何と言っても、ガエル・ガルシア・ベルナル演じる天才指揮者、ロドリゴが魅力的。メキシコから来た才能あふれる指揮者で、その自由で破天荒なやり方に周りは惑わされっぱなし。しかし憎めないキャラクターで情熱的な彼は周りから愛され、楽団になくてはならない存在となります。
中年だけれど少年のような笑顔と天然さが本当に素敵で、周りは彼を放っておけないんですよね。しかし決してカリスマ性ばかりを持ち何でも上手くいくというわけではなくて、仕事にもプライベートにも悩み、苦悩を抱え、彼自身も前に進もうとしている。そんな描写がより人間性に富んでいて良かったです。
指揮者って近寄りがたいイメージを勝手に持っていたのですが、ロドリゴのキャラクターはいたってフレンドリー。通勤は自転車で、私服もラフ(キャラクターによく合っています)、誰にでもすぐ話しかける。彼のような人物がいれば、きっと敷居の高い(イメージがある)クラシックももっと気軽に楽しめそうな気がしました。
話がそれますが、私、ガエル・ガルシア・ベルナルが昔から大好きでした。スペイン語を勉強しようというモチベーションも、元をたどると彼の影響が大きいです(笑)。映画にハマり出した頃、『アモーレス・ペロス』『モーターサイクル・ダイアリーズ』『ブエノスアイレスの夜』などの彼の出演作を観てファンになりました。
しばらく彼の出演作を観ていなかったけれど、こんな素敵なドラマで再会できてとても嬉しい。彼も白髪がまじる中年に差し掛かってきたものの、少年のような表情はそのままで、魅力的な大人の男性になったのだなと感慨深くなりました。勝手に(笑)。
もう一人の主人公は、若い女性オーボエ奏者のヘイリー。幼少の頃からオーボエを始め、一流になるべく奮闘しています。どこか自分に自信を持てずにいたヘイリーが、ロドリゴとの出会いを通じて自信をつけ、成長していきます。
ロドリゴからは、スペイン語なまりで「ハイライ」と呼ばれます。個性的なロドリゴに対し、ヘイリーはとっても普通の女の子といういで立ち。そのギャップもまた可愛らしくて良かったのかな。ロドリゴの元妻で天才バイオリニストのアナ・マリアは超絶美人の性格ぶっ飛びキャラでしたし( ´艸`)
ただ、私としては…ヘイリーが指揮をやり出してからはあまり好きではなくなってしまいました。ひたむきにオーボエで一流になりたいと頑張っている時の方が良かったな。
脇を固めるキャラクターもしっかり描かれていて、皆良かったです。決定的な悪役がいないというのも、安心して観ることができて、誰にでも愛着を覚えてしまいます。
楽団の理事長グロリア役のバーナデット・ピーターズは、『グッド・ファイト』でマイアの母親を演じていた人だ!
クールな美人チェロ奏者シンシア(サフロン・バロウズ)、ロドリゴの前任の指揮者トーマス(マルコム・マクダウェル)も、ストーリーを盛り上げる重要なキャラクターです。
また、ゲスト出演者も豪華。
著名ピアニストのラン・ラン(郎朗)や、バイオリニストのジョシュア・ベルが本人役で出演しています。
さらに、伝説のオペラ歌手役で派手に存在感を見せつけたモニカ・ベルッチには参りました。その圧倒的な美貌は健在です。
シーズン4では日本が舞台のエピソードがあり、『HEROES』のマシ・オカや加瀬亮、原田美枝子らも出演しています。
ニューヨークを中心に、メキシコ、イタリアなど複数ロケ地があるのも楽しい。しかし、しかし…。シーズン4の日本のシーンは、なんだかなぁ~。ちょっといただけなかった(笑)。
でも、ガエルさんたちが日本でロケをしていたなんて嬉しいです。
ロケは東京や札幌で行われたそうです。渋谷のスクランブル交差点や山手線、タワーレコードなど、東京で見慣れた光景がちらほら。グロリアとトーマスがハリネズミカフェに行ったシーンでは笑いました🦔
アメリカのドラマって、警察、弁護士、医療、テロ、超能力などばかりで、ハラハラするけれど観ていて疲れる…。そんな人にもおすすめできるドラマだと思います。
ただ、残念ながら、シーズン4を最後に制作は終了となってしまいました。
シーズン4最後のロドリゴがこの先どうなるかが気になったので、とても残念です😢もう少し、『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』の世界に浸っていたかったな。
それにしても、『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』にしろ、『マーベラス・ミセス・メイゼル』にしろ、Amazonオリジナルドラマにも秀作がありますね!
Amazonプライムのコストパフォーマンスに日々感謝しております(笑)。
↓原作となったブレア・ティンドールの著書(日本語訳)はこちら
痛みを感じない男と、痛みを感じてはいけない女。韓国映画『痛み』
映画鑑賞記録。2011年の韓国映画『痛み』をAmazonプライムで観ました。
このタイトルが良い。悲しみも切なさも含んだ一語、「痛み」。
※画像をクリックするとAmazonページに飛びます
『痛み』(2011年韓国)
原題:통증
監督:クァク・キョンテク
出演:クォン・サンウ、チョン・リョウォン、マ・ドンソクほか
Amazon.co.jp: 痛み(字幕版)を観る | Prime Video
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幼い頃事故で家族を亡くし、その後遺症で皮膚の感覚を失った男ナムスン(クォン・サンウ)。少年院で出会った兄貴分のボンノ(マ・ドンソク)と借金の取り立て屋をしており、痛みを感じないナムスンは殴られ役を演じることで相手に恐怖を与え、借金を返済させるという手段を使っていた。
ある日、亡き父の借金を背負ったドンヒョン(チョン・リョウォン)という女の所へ借金を取り立てに行く。物怖じしないドンヒョンに不思議な感情を抱き始めるナムスン。二人は惹かれ合う。
ドンヒョンは、わずかな出血でも命取りになってしまう血友病を患っていた。いくら血を流しても痛みを感じない男と、血を流すことのできない女。相手の痛みを知り、距離を縮めていく二人だが…。
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二人の男女の物語ですが、決して甘いラブストーリーではなくて、悲壮感を露骨に漂わせもせず、バイオレンスを掛け合わせて人の心情を突いてくる描き方が、とても韓国映画らしくて好きだと思いました。監督はクァク・キョンテク、『友へ チング』の監督さんでしたか! 私が初めて観た韓国映画は『友へ チング』で、当時高校生の私は一人で映画館で観たのですけど、初めての韓国映画にものすごい衝撃を受けたことをよく覚えています。この時から、私の中の韓国映画のイメージは『友へ チング』なんです。
いくら殴られ血を流しても痛みを感じず、痛みだけではなく味覚や皮膚感覚も失ってしまったナムスン。 日々を無気力に過ごし、笑うことも涙を流すこともなかった。
そんな彼が、貧乏で難病を抱えているが、喜怒哀楽を隠さず自分のことを怖がりもしないドンヒョンと出会い、惹かれ合います。
無痛症と血友病、対照的なコンプレックスを抱える二人。相手の痛みを知って相手のことを愛する。そんな二人が不器用で美しくて、そして儚く、脆い。痛みを感じない男と、痛みを感じてはいけない女が、心の痛みを感じる時。その瞬間の、クォン・サンウとチョン・リョウォンの演技に魅せられました。
韓国語もっと聞き取れるようになりたいよー。勉強しようっと。
【読書記録】想像もつかないユニークな国と地域がたくさん『国マニア 世界の珍国、奇妙な地域へ!』
『国マニア 世界の珍国、奇妙な地域へ!』を読みました。地球儀や世界地図をいつまででも眺めていられるほど好きで海外への興味が尽きない私、とても面白く読みました。
※画像をクリックするとAmazonページに飛びます
『国マニア 世界の珍国、奇妙な地域へ!』吉田一郎著 ちくま文庫(2010年発行)
私が読んだのは、この文庫化される前の単行本(交通新聞社、2005年発行)です。もう15年前の古い本で、少なからず各地の情勢は変わっていることと思いますので、それを前提に。
著者の吉田氏のお名前は存じ上げませんでしたが、プロフィールによると「香港ポスト」記者や「香港通信」「香港ビジネスポスト」編集長を経て、現在無所属のさいたま市議になっています。
「小さくても立派にやってる極小国家ベストテン」「国の中で独立するもう一つの国」「ワケあって勝手に独立を宣言した国々」「常識だけでは判断できない珍妙な国・地域」「かつてはあったこんな奇妙な国・地域」の五章構成で、52の国(?)・地域を紹介しています。
「極小国家」で紹介されるバチカン市国やモナコ公国、ツバル、モルディブ共和国など比較的有名な国から、私の不勉強もありますが全く名前を知らなかったユニークな国・地域がたくさん。
国際的に国とされない自治州や扱いが複雑な国、勝手に独立宣言したけれど認めれられていない国、つい数十年前まで存在していた不思議な国など、日本で生まれ育った身からすると想像を超える背景を持つ国々がたくさんです。世界地図と見比べつつ、訪れたことのない現地の風景を想像して読んでいました。
その仕組みを知らなかったアラブ首長国連邦、ハローキティ金貨を発行したクック諸島のニウエ、領土は持たないが100以上の国と外交を結ぶ“国家”マルタ騎士団、かつてはアメリカの領土だったパナマ運河地帯、などなど。
日本にいては想像もつかないことが盛りだくさんです。世界は本当に広く、面白い。
ところで、国の定義とは。本書の「シーランド公国」のコラムでは、
一九三三年のモンテビデオ条約によれば、国際法で認められるべき国家の要件は、①国民、②領土、③政府、④外交能力で、シーランド公国はこれらは満たしていそうだが、一九八二年に締結された国連の海洋法では、島について「自然に形成された陸地」と定義しているので、人工島は領土として認められず、人工島だけを支配するシーランド公国は、領土を持たないから国家とは認められないということになる。
とあります。
外務省によると↓、国の数は196(日本が承認している国195+日本)。
ただし、これはあくまでも「日本が承認している」数なので、日本以外では見解が違う場合が多々あります。
本書『国マニア』の冒頭「はじめに」でも、こう記されています。例えば、上の外務省ホームページでも確認できますが、日本政府の公式見解では東アジアにある国は日本と韓国、モンゴル、中国の四つ。北朝鮮と台湾(中華民国)は国とみなしていません。しかし、中国政府やモンゴル政府の見解では、北朝鮮は国です。
東アジアだけ見てもこのような複雑さなので、ましてや世界レベルでこれを考えると、「国」というものの見方が各国によってかなり異なることは容易に想像できます。
これから生きている間にどれだけ未知の国や地域を訪れることができるか分かりませんが、やっぱり世界を知ることは面白いし、日本に留まっていてはもったいないとつくづく思います。
夢が広がる一冊でした。
(参考)